Vol.169「スーパーマーケット環境調査を全国で! 今年秋に実施予定!」 堀 孝弘

 


「スーパーマーケット環境調査を全国で! 今年秋に実施予定!」


堀 孝弘
(きんき環境館(エコネット近畿)職員)


 


  

〇スーパーマーケットチェーンによるプラ包装の差は結構大きい

 前回記事の続きです。昨年(2022年)11月、筆者が所属していた京都市ごみ減量推進会議は、京都市内スーパーマーケット62店の環境対策調査を行いました。その結果、青果物売り場でプラ包装された商品は、商品点数比、棚面積比、いずれも70〜80%占めていることを明らかになりました。ただ、もしどのスーパーマーケットチェーンも同じようにプラ包装を用い、同じように削減に取り組んでいるなら、今以上に減らすことは難しいのかもしれません。でも実際には、プラ包装の多い・少ないはチェーンによって大きく異なります。
・下の図 ※ は、横軸が商品棚に占める割合で、縦軸は商品点数の比率をあらわしています。右上にいくほど、はだか売りが多く、左下ほどプラ包装が多いことを示します。真ん中やや右上の赤丸は全店平均で、右横の( )内の数字は調査店舗数をあらわしています。各チェーン名は色付きの帯で隠しています。色はそのチェーンの年間売上高の規模で分けています。黄色は1,000億円以上で全国的な大手チェーンです。以下、水色、赤、青と小規模になります。右横の( )内の数字は、そのチェーンの調査店舗数で、その平均の数値を色付き帯の下の( )内に記しています。

〇良い事例を他のスーパーに広めたい

 図を見ていただくと、右上から左下まで、点が広く分布していることがわかります。中には調査対象にした青果物の全てがプラ包装されていたチェーンもあります。また、同じような規模、客層のチェーンでも差があることがわかりました。
また、この調査からは事業規模とプラ包装の間に、明確な関係は見えませんでした。ということは、プラ包装を減らそうと工夫しているスーパーの取組を、他のスーパーに広めることで、規模の大小に関係なく、今よりもっとプラ包装を減らすことができるのではないか、と思いました。
 この調査では、青果物売り場だけでなく、他の売場でもプラ削減の好事例が多く見つかりました。その中には、省エネ事例や健康に配慮した商品のも数多く見つかりました。2023年3月には、京都市内で「スーパーマーケット環境調査で、市民が見つけた好事例報告会」を開催しました。当日は約80人の参加があり、市民・学生だけでなく、スーパー本社5社、京都市を含む3市の環境担当者の参加もありました。
 これらの成果は、京都市ごみ減量推進会議の以下のサイトにまとめて掲載しています(報告その1「調査の概要」から報告その7「好事例報告会の開催報告」)。
https://2r-ecotown.kyoto-gomigen.jp/2r-activity/ 

〇全国調査の期待できる効果

 成果をあげた京都市内でのスーパーマーケット環境調査ですが、プラ包装の状況等、調査結果は京都市内特有のものかもしれません。関東やその他の地域と(京都を含む)関西では、スーパーマーケットの環境の取組に差があるのかもしれません。一方、プラ削減をはじめ、省エネについても京都で見られた取組より、もっと効果的な事例があるかもしれません。何より、全国の多くの団体や市民・学生が参加する調査が実現すれば、スーパー等流通事業者にしても、これまで以上に環境の取組を推進する動機を生み出すことができるでしょう。
 コロナ禍もあり、それ以前よりプラ包装は増えたと思われますが、2030年にはS D G s達成年を迎えることもあり、今後プラ包装は削減されていくはずです。ただ、いつと比べて、どれだけ減ったのか、基点となる情報(調査結果)がなければ、成果を知ることができません。わずかな削減で「ヨシ」とならないためにも、「2023年の使用状況」を把握する必要があると思います。
 もうひとつ。市民・学生など消費者にとって調査への参加は、環境学習の格好の機会でもあります。どのような環境配慮商品も消費者が選択しなければ、世の中に広まりません。流通企業の事情も知ったうえで、環境に配慮した商品とはどのようなものか知る機会になり、グリーンコンシューマーを増やす力にもなるでしょう。

〇今年のスーパーマーケット環境調査

 昨年(2022年)の京都市内での調査は、京都市ごみ減量推進会議が中心になって実施しました。調査の責任者を務めた筆者堀が、今年(2023年)4月同会議を退職し、今年度以降の全国調査は、京都市内に事務局を置くNPO法人環境市民の中に実行委員会(仮称)を設け、ここを根拠地として全国の市民団体等に働きかけていきます。環境市民は1990年代から京都市内版をはじめ、全国版グリーンコンシューマーガイド(環境に配慮した買い物ガイド)の作成や、同様のガイドブックの作成を目指す各地の団体や市町の支援などを行なってきました。
 2011年以降、他の活動に注力することになり、スーパーマーケットの調査は行っていませんでした。その間、社会状況は大きく変わり、気候変動もプラスチック問題、さらには食品ロス問題など関心の高まりとともに「待ったなし」の状況になりました。

 今(5月現在)は、10月から11月にかけての全国調査実施に向けて、実行委員会の体制づくり、活動資金を得るための助成金申請の準備、かつて活動でご一緒した団体をはじめ、各地の市民団体やネットワーク、旧知の大学の先生を通じて今年の調査への参加呼びかけ、この原稿をはじめ、さまざまな媒体での活動紹介、昨年使用した調査票の見直しなどを進めています。
 ご関心のある方は、ぜひこちらに連絡ください。thori☆kankyoshimin.org(☆を@に)
 ちなみに、スーパーマーケット環境調査実行委員会というのも仮称ですので、もっとかっこいい名前があれば、ご提案ください。

 

堀 孝弘

【プロフィール】

堀 孝弘(ほり たかひろ)
NPO法人エコネットきんき職員(きんき環境館勤務)。京都市中京区生まれ。9 歳の時、郊外の西京区松尾大社近くに転居。広大な田畑や山と 川、竹林、里山が遊び場だった。企業、生協職員から環境 NGO専従スタッフ、大学職員、大学講師、自治体管理職などを経て 2015 年から8年間、京都市ごみ減量推進会議に勤務。2023年4月21日より現職。自治体の環境基本計画の策定や推進などにも携わってきた。

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