Vol.27 社会が必要とする市民活動の創発 堀 孝弘



社会が必要とする市民活動の創発 堀 孝弘


3Rのうち、2Rが大切だと言われるが
3Rのうち、2R(リデュースReduce、リユースReuse)が大切だと言われる。しかし社会を見渡すと、もうひとつのR(リサイクルRecycle)ばかりが目に入る。リサイクルは、大量生産、大量消費社会を維持したままでも社会に広めることができる。直近30年ほどを振り返っても、まずは、空き缶や紙など身近なリサイクルが市民生活に浸透した。その間、缶飲料(この後のPETボトルも含めて)や紙製品などの消費は大きく拡大し、リサイクルは消費を後追いしながら発展したと言える。一方、2Rの推進には、生産者や流通・販売事業者の協力が必要になる。市民団体にとってそれは高い壁でもある。そのうえ2Rを後押しする政策も弱い。そのような状況ではあるが、各地に先進的事例が生まれている。それらはまだ「芽」かもしれないが、それらの実現プロセスの中に、どの地域にも通じる成功のカギが見つかるのではないだろうか。各地の2R推進活動を概観しよう。

各地の2R推進活動
グリーンコンシューマー活動 環境対策に熱心なスーパーを冊子などで紹介
はかり売りやノートレイでの精肉販売など、容器包装の削減に寄与する販売方法など、地域のスーパーマーケットの環境対策を評価し、冊子などでわかりやすく消費者に伝える活動として「買い物ガイド作成活動」がある(注1)

リユース食器レンタルで、祭り・イベントでの容器包装ごみを削減
千里リサイクルプラザを拠点にした「エコイベントプロジェクト」や、京都市中京区に事務所を置くNPO法人地域環境デザイン研究所ecotoneなど、現在全国41団体がリユース食器レンタルを実施している 注2

「減装(へらそう)商品」、減装ショッピング
神戸大学に事務局を置くNPO法人ごみじゃぱんの活動。より包装の少ない商品を「減装(へらそう)商品」として認証し、店頭でのPOP掲示でわかりやすく表示。消費者の購買行動だけでなく、生産者のモノづくり、流通事業者の売り方にも影響を与えている。

容器包装お返し大作戦
東京都日野市が地域の市民団体や事業者と協力して推進。行政が資源回収していたペットボトル、トレー、牛乳パックを、販売したスーパー等の店頭回収箱に「お返し」するよう市民に促すもの。目的として「容器包装削減・使い捨て商品の削減」「拡大生産者責任の強化」「毎年約7億円のリサイクル費用の軽減」などがある注3 。

地域をあげ全店でのレジ袋無料配布停止協定の実現
福井市では、福井市くらしの会の働きかけで、2009年16事業者163店のレジ袋無料配布停止が実現した。数年にわたる市民啓発を戦略的に取り組み、2008年には消費者アンケートで「レジ袋の有料化に賛成」が80%に達し、その数字を示して事業者の納得を得て、翌年の一斉実施を実現した。

日本ワンディッシュエイド協会、リユースカップの取り組み
使用済み陶磁器をリサイクルしたスイーツ容器を作成。ケーキ屋さんに使ってもらい、さらにデポジットを活用して、リユースする活動を展開。徐々に賛同店舗を増やしている注4 。


◆問題解決の活動を創発する力

これら以外にも各地に魅力的かつ効果的な活動が創発されている。また市民団体にかぎらず、3R・低炭素社会検定 実行委員長の浅利美鈴氏のように、研究者のなかにも地域実践活動に取り組んでいる人もいる注5 。

では、このような活動は、どのように生み出されるのだろう。地道に活動していれば、実現するものでもない。日本ワンディッシュエイド協会の樽井雅美さんに、NPO法人環境市民主催セミナーに講師依頼をした際、この点を尋ねた。樽井さんがまとめてくれたのが以下の9条。

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 1.とにかく、やりたいと思うことを自分自身が思いっきり楽しむ。
 2.ぶれないビジョンをお経のように唱え続ける。
 3.現場の話を聞き続ける。現場を観察する。
 4.小さな成功を思いっきり喜ぶ。喜びを分かちあえる人に話す。
 5.失敗も包み隠さず話す。
 6.今の活動以外の個人的なネットワークに呼びかけてみる。
 7.小学校4年生が理解できる形に落としこむ。
 8.自分は幸せかぁ〜 みんなが幸せかなぁ〜と考える。
 9.できるかぎり素人であれ、おおらかであれ。
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環境問題の深刻さを目の当たりにして、問題意識を持つ人は居ても、その解決・改善のために新たな活動を創発できる人は少ない。上記の9条には、その「壁」を超えるためのヒントが凝縮されている。心に芽生えた問題意識を具体化し、その解決・改善の活動に必要な情報や仲間を引き寄せ、幾度の挫折や失敗ですら糧とし、燃え尽きずに活動を継続するためのヒントである。

それは行動特性(コンピタンシー)とも言える。行動特性は知識や技能(スキル)と違い、簡単には修得できない。しかし「性格」とも違い、変えられないものでもない。上記のような指針を常に意識することで、多少でもこのような境地に近づけるだろう。

検定の合格はゴールでなく、学習の課程で得た情報や知識を社会に役立ててこそ意味がある。上記の9条は、地域実践活動の創発にかぎらず、自己実現のための指針としても役立つだろう。多くの人に活用してもらいたいと思う。


注1) 3R低炭素検定公式テキスト第1章「グリーンコンシューマー」の項を参照。
注2)http://www.reuse-network.jp/network/ を参照。
注3)  リユース食器、減装ショッピング、容器包装お返し大作戦の3事例は、筆者のブログ「各地の2R先進事例 勇気の出る活動報告会・内容報告」でも紹介している。
http://www.kankyoshimin.org/modules/blog/index.php?content_id=161
注4)  福井市くらしの会と日本ワンディッシュエイド協会の活動は、堀ブログ「参考事例の宝庫 市民活動の未来を拓くセミナー第1回報告」でも紹介している。
http://www.kankyoshimin.org/modules/blog/index.php?content_id=247

注5)  デパートにおけるクリスマスプレゼントのノーラッピングの取り組みなど。注4で紹介した筆者のブログ「各地の2R先進事例 勇気の出る活動報告会・内容報告」でも紹介している。



 



堀孝弘




【プロフィール】
堀 孝弘

NPO法人環境市民 事務局長
京都グリーン購入ネットワーク
京都精華大学人文学部 非常勤講師
龍谷大学政策学研究科 非常勤講師
京都市廃棄物等減量審議会委員
京都市ごみ減量推進会議理事

 著書
「(使い捨て・暴力を広める)日本のおもちゃ・アニメはこれでいいのか」 地歴社 1996
「グリーンコンシューマーガイド1999京都」(共著・制作責任者) 環境市民 1999
「グリーンコンシューマーになるための買い物ガイド」(共著)、 小学館刊 2000
 「だれでもできるデポジット」 合同出版 2000 共著
「やってみようエコチェック」 講談社 2002 共著
「ごみ問題100の知識」 東京書籍 2004 共著
「3R検定公式テキスト」 ミネルヴァ書房 2008 共著
「ごみ減らし役立ちハンドブック」 環境市民 2010 など

生まれは京都市中京区(中心部)ですが、7才の時、今でも緑の多い京都市西京区松尾に転居。現在も在住。
愛宕山と桂川、苔寺と松尾大社、雑木林と竹林、鎮守の森と谷川、バブル期まで残っていた広大な田畑、あぜ道のツユクサやヨメナ、幸運なことにこれらに囲まれて育ちました。
それと子どもの頃から、たいてい家には犬か猫が居たので、今でも動物が大好きです。

年間20〜30回、自治体、市民団体、企業主催の環境・子育て学習会の講師をしています。
市民活動(普通の生活)の中から湧いてきた“疑問”を大事に活動してきました。


もうひとつのプロフィール
98年まで15年間共働きをしてきました。一時専業主夫も経験。子ども2人の保育園時代は送迎のほとんどを担当。96年には地域の小学校でPTA副会長も経験。おそらく普通の男性より家事・育児を多めに経験してきたと思います。
家族、同い年の妻、昭和生まれの娘、平成生まれの息子、21世紀生まれの犬(雑種)、2012年から義母と同居開始!

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