Vol.197 『気候変動 市民・企業人・公人として』

 

 


『気候変動 市民・企業人・公人として』

杉江 不二子

環境省環境カウンセラー



 気候変動、はじめの一歩は全体を学ぶことから!

 皆さんにも、同感していただけると思います。

 気候変動は皆さんもご承知のように、地球規模で国際的、広範な分野に関わる莫大なスケールです。言い替えたとしても、幅が広く層も深く、時間軸も長い・縦軸横軸斜め軸と、やはり漠然とした話に変わりはありません。けれど、ご自身の知識・経験値をより確かなものに深め、市民・企業人・公人として、 “何ができそうか!何ができるか!” を探っていくことは可能だと考えられます。

 2025年10月13日に、大阪・関西万博が閉会します。万博に訪れた方・関心をお持ちになった方もいらっしゃると思います。コンセプトは、「いのち輝く未来社会のデザイン」です。

 このコンセプトは、気候変動を学ぶ要素がたくさん含まれていると思いませんか?

 パビリオンの資料には、気候変動の先端が示されているので、新しい知識やヒントを得た方が多くいらっしゃることでしょう。私が行く前に楽しみにしていたのは、「氷のクールスポット」(2)です。「氷のクールスポット」に入ると、桐の香りがして全体がひんやりと快適、広さは6畳4つ分程度でした。当然ながら、エアコンの室内機と室外機はなく、氷蓄熱ユニットと太陽光パネルがありました。冷温貯蔵庫として使われていた氷室から着想を得て現代の技術で再現したということです。このように、氷蓄熱の技術と太陽光発電を組み合わせて新たな設備を作るって素晴らしいと思います。

 気候変動で、日本の夏場のような暑さは、5月~10月と長くなっているものの、「氷のクールスポット」が冬の暖房にも使える新しい装置を兼ね備えれば年間通じて普及するかもしれません。気になったので、電子メールで夏場の装置を切り替えて冬場にも利用できないか、問い合わせましたが夏場のみの装置という返事でした。

 普及と言えば、以前私は年間利用ができる地中熱の空調体験をしたことがあり、エアコンに代わる設備になると期待したのですが、高額な初期費用を要するなどで普及は進んでいないようです。高額な初期費用を抑える新しい設備が開発されたら、こちらも普及の余地があると思えてなりません。これらは、夢ではないと思います。

 かつて、家庭では夏場に冷房を使い冬場の暖房はストーブなどが主流でした。それが、冷房と暖房を兼ね備えた新しい装置としてエアコンが登場し今では主流です。最近では、家庭用エアコンの室外機内部のコンプレッサーに蓄熱槽(3)を配置し、空気中に放出されていた熱を逃がさないという技術も製品化されているようです。

 次に、よく知られている太陽光ではなく、太陽熱利用が一般家庭で普及した例があります。太陽熱温水器といい、屋根の南側に水を貯め太陽熱で温水に変え、それを風呂の湯に使うという設備で、ガス代やプロパンガス代の節約になるということで流行しました。当時、近所の人たちは月賦(分割払い)の契約をして取り付けていました。手の届く高額さだったのでしょう。デメリットとしては、屋根に負担がかかると言われていました。
それでも、1970年代前後の普及率は高かったのですが、2000年ごろから太陽光発電に変わり減っていきました。

 自然エネルギーは、太陽光・風力・水力・波力・地中熱利用などがあり、それらがもっともっと使われるようになることを願っています。

 日本は2050年までに「カーボンニュートラル」を目指していることをご存知だと思います。25年前の2000年ごろから太陽光発電が普及したように、今後の25年で “何ができそうか!何ができるか!” 住宅・企業・施設が、取り入れやすい装置と設備で「カーボンニュートラル」の達成を望みます。

 同時に世界情勢の影響で、CO2の数値が膨らみ続けている例を共有したいと思います。海路は中東を避けアフリカ南端の喜望峰経由の迂回航路 (2024年後半~)に変化、飛行ルートはロシアを大きく避けて冷戦時代にも利用された迂回ルート(2022年~)になっています。現在、CO2の削減と増加は相対するようです。 

                            羽田→パリ 飛行ルート

参照
リサイクルメダルプロジェクト(小規模講座開講を検討)(1)
https://www.aichi-nagoya2026.org/news/detail/736
「氷のクールスポット」(2) 
https://www.daikin.co.jp/press/2024/20240822
蓄熱槽 (3) 
https://panasonic.jp/aircon/contents/enecharge.html

 

   杉江 不二子

【プロフィール】

杉江 不二子(すぎえ ふじこ)

環境省環境カウンセラー
愛知県・名古屋市 環境局委員
元企業 環境・社会貢献担当

活動歴 
自然エネルギー/SDGs (ジェンダー)
リサイクルメダルプロジェクト(1)

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