Vol.185 「資源循環の学びの場づくりのために」 向中野 裕子

 

 


「資源循環の学びの場づくりのために」

向中野 裕子

(一社)産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター


 もし2050年に循環経済が実現した社会があるとしたら、どのような社会になるでしょうか。家、学校、駅、お店、動物園、自然体験の場、さらにはWEBサイトなど、さまざまな場所で資源循環に触れ合い、実行する場があるでしょう。こうした環境では、人は幼い頃から生涯にわたり資源循環の学びを選択し、小さな「できた!」体験を積み重ねることが期待できます。

 社会の中に、資源循環の学びの場を豊富に増やしてきたいですね。

 今年の夏、弊所は3R・資源循環推進フォーラムと共催で、小・中学生向けにロスフラワーのアップサイクルワークショップを開催しました。会場では、「この色の花でよりかっこよくなるよ!」や「こんな形もできるんだ!」と、子どもたちの声が響きました。本来廃棄されるはずの花を使い、「リビングの穴をこの花で隠す」や「お祖母ちゃんに花束を贈る」といったイメージを膨らませながら、色や形を組み合わせて新たな花の価値を創造していきました。完成が近づくと、「どうしてまだ使えるのに、お花は捨てられるの?」という問いも聞こえてきました。

 循環を自分の頭で考え、伝えてくる瞬間だ!

 まるで種から芽が出て枝や葉が広がるように、子どもたちは体験を通じて既存の知識を比較し、新しい情報を得て思考を大きく成長させています。こうした瞬間に出会える資源循環の学びの場は、大人にとってもワクワクする機会であり、子どもたちの言葉や行動から新たな気づきや考え方を得ることができます。

 とはいえ、現実は簡単ではなく、頭や身体をひねって考える難しさもあります。例えば、弊所には学校の先生から資源循環の授業づくりの相談が寄せられます。大きく分けて2つのケースがあります。

 1つ目は、学びの目的がはっきりしている場合です。プラスチックの実験や医療系廃棄物の研究など、子どもたちが探究したいテーマやねらいが明確のため、国や自治体、企業、学術機関などの教材や取り組みと結びつけ、デザインしていきます。

 2つ目は、学びの目的や方法を共に探るケースです。簡単に学べるものというキーワードや、地球温暖化に特化したいのに資源循環が関係ないと思うような状況から話がスタートします。子どもたちの日常生活や地域の産業をヒアリングしながら、どの学びに循環の要素を組み込むかを一つずつ結びつけていきます。時間はかかりますが、その先生たちが学校内の別の先生に伝える良い効果もあり、コツコツ、コツコツ、たまに沈み、またコツコツ積み上げています。

 子どもたちの資源循環の学びの場を推進するには、社会の柔軟で優れた教材の活用を推進すると共に、学びの場づくりに取り組む方々が一人で抱え込まずに支援を受けることも大切だと感じています。このことを皆さんと共有しながら、ともに良い学びの支援について意見を交換できれば嬉しいです。

 

 

向中野 裕子

【プロフィール】

向中野 裕子(むかいなかの ゆうこ)

東京学芸大学大学院 (環境教育) 修了

福岡大学資源循環・環境制御システム研究所、(一財)日本環境衛生センターなどを経て、
現在は(一社)産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター  
環境学習主席スペシャリスト、主査(環境カウンセラー)

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