Vol.152「脱炭素社会はどのような社会?」 楠部 孝誠


「脱炭素社会はどのような社会?」

楠部 孝誠(石川県立大学)

 

 

 

 多くの人が知識としての地球温暖化問題を認識し,その原因となる温室効果ガス削減の必要性について理解していると思います。また,近年頻発する自然災害やそれに伴う被害が発生するたびに気候危機を想起せずにはいられません。しかし,自らの生活や行動様式から発生する温室効果ガスが気候危機の遠因となっていることはイメージしづらい上に,仮に自らが脱炭素化や低炭素化行動に参加しても,直接的短期的にその効果が表れ,感じれるわけではないため,どうしても当事者意識がわきません。
 また,現在の生活におけるあらゆるものが直接的・間接的に化石燃料に依拠しているため,単に電力消費や燃料利用を脱炭素化する,あるいは低炭素化すれば済むという話ではなく,社会の仕組みそのものを大きく転換する必要性に迫られていることが,脱炭素社会の実現の大きな障壁となっているのはないでしょうか。
 脱炭素は脱石炭・脱石油であり,化石燃料からの離脱を意味すると捉えると産業革命以来の人間社会の大転換といっても過言ではありません。そのためには生活の質や様式,産業構造の大転換が必要ですが,今の脱炭素に向けた政策は生活様式や産業形態を根本的に変えずに,新たな技術開発によって目標を実現しようとしています。しかし,いくら優れた技術が開発されたとしても技術だけで対応できる問題ではありません。なぜなら,気候危機の本質的な原因は温室効果ガスの量=人間の活動量だからです。つまり,「活動量を減らす」「活動の質を変える」というある意味これまでとは違う不便さを許容することが求められているのではないでしょうか。
 どうすれば,生活の質や様式,産業構造を転換することができるのか,地域の核となりうる検定合格者の皆さんと脱炭素社会へ向けた緩和策と適応策をご一緒に考えていくことができたらと思います。

 

楠部 孝誠

【プロフィール】

楠部 孝誠

石川県立大学生物資源工学研究所 講師
北陸地域の3R・低炭素社会検定の検定講習を担当
専門:環境システム工学
1971年生まれ(和歌山県)

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