「コロナウイルス騒動に寄せて ~今こそ智慧の発揮どき~」
村岡 良介
今回も編集長としての寄稿になります、ご容赦いただきます。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、その情報があらゆる国内のマス・メディアを席巻しています。
報道の関心は、感染そのものに対する危機意識の一方で、マスクや消毒液やトイレットペーパーなどの日用品の不足にも及んでいるようです。
感染予防のためにマスクが需要過多になることは理解できますが、現在騒がれている品薄、不足の要因は、感染予防のために購入が殺到しているためだけとは思えません。
政府は国民生活安定緊急措置法の政令施行によりマスクの転売を原則禁止し、一部の業者や個人による買い占めを防ぐ措置を第2弾の緊急対応策に盛り込むこととしています(2020年3月5日、日本経済新聞)。
トイレットペーパーの買い占め騒動は、1973年(一次)、1976年(二次)のオイルショック(石油危機)を思い出させます。
中東情勢の悪化によって石油が不足し、様々な経済的な影響が出た事件です。
オイルショックにより、「紙がなくなる」という噂があったところに、あるスーパーがたまたまトイレットペーパーの大安売りをしたら、開店前からそれを買い求めようと何百人もの人々が行列を作り、その様子を新聞記事で見た人々が不安になり、トイレットペーパーの買い占めに走ったとされています(ウィキペディア)。
今回の買い占め騒動は、SNS(会員制交流サイト)上に「マスクとトイレットペーパーの原材料は同じ。マスクの増産に伴って次は紙製品が品薄になる」と書き込まれたことに端を発し、デマが広がった(日本家庭紙工業会)と言われています。
業界が「トイレットペーパーの多くは国内生産で、一時的に店頭から無くなってもすぐに補充できる」と呼び掛けても、品薄の不安による買い占めは、おむつなどの他の日用品からレトルト食品、缶詰、カップ麺、米などにまでその対象を拡大しています。
「デマだとわかっていても、無くなってしまうから買っておこう」という消費者の心理的なパニックは、感染症と同様に収束が見えません。
オイルショックの時のトイレットペーパーの買い占め騒動と今回のそれとは共通点があります。
噂やデマに起因していること、発信のメディアはラジオとSNSの違いがありますが、人々が行列を作り、買いあさり、商品棚が空になっている画像や映像による視覚イメージは強烈で、危機意識が醸成されたことでしょう。
今回の騒動は、感染による危機意識以上に、生活の安心を確保し、家族を守ろうとする意識も働いています。
このような時に、「冷静な行動をしましょう」と一方的に呼び掛けても効果はありません。
買い急ぎ、買い占めなくても大丈夫で、安心できる根拠や証を示さなければならないでしょう。
「3R・低炭素社会検定」により、知を獲得し、連結された読者の皆様は、トイレットペーパーの国産率はほぼ100%であり(日本製紙連合会)、古紙からリサイクルされて循環しているものもあることを踏まえ、相当量の調達が可能で ある「安心」を家庭で、地域で、職場で伝えましょう。
不必要な食品や日用品などの買い占めが食品ロスや多量の廃棄物となり、社会に与える悪影響を訴えましょう。
「知の実践」も「知の展開」も、今この時にも求められているのです。
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