Vol.81 「バイオ燃料 〜市民が支えるバイオディーゼル燃料 その1〜」 中村 一夫



「バイオ燃料 〜市民が支えるバイオディーゼル燃料 その1〜」

 

中村 一夫

 バイオ燃料とは、二酸化炭素を吸収して成長する植物などからつくられた燃料で、この燃料を利用して発生した二酸化炭素は、また、植物などに利用されて増えも減りもしないことからカーボンニュートラル(炭素に対して中立)であり、石油などの化石燃料使用に対して、地球温暖化防止に貢献するものであります。
 更に、バイオ燃料になる原料として、使用済み天ぷら油や生ごみ、剪定枝などの廃棄物をリサイクルして利用することは、循環型社会の構築にも貢献することにもなる意義のある燃料です。また、バイオ燃料の種類には、バイオガソリン、バイオディーゼル燃料などがあり、主に、バイオガソリンは、生ごみやトウモロコシなどからエタノール発酵などにより造られ、バイオディーゼル燃料は、使用済み天ぷら油やパーム油などの油脂類から化学反応(エステル交換反応)により造られます。
 なお、我が国の二酸化炭素排出量の内、自動車など運輸部門からの寄与率は、約18%近くもあり、温暖化防止に向けては、自動車の利用を控え、公共交通機関などの利用やカーボンニュートラルなバイオ燃料の利用の促進、更には、燃料電池、電気自動車など新たな自動車の開発促進などの取組みが重要であります。

 ところで、京都市では、平成9年に京都市で開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)をきっかけに、市民による使用済み天ぷら油の回収活動と連携し、これらを原料としたバイオディーゼル燃料を製造し、市民に身近な市バスやごみ収集車に利用するバイオディーゼル燃料化事業を開始し、年間約150万リットルの利用により、約4000t/年の二酸化炭素削減につながっています。
 また、この市民の回収活動と連携したバイオディーゼル燃料化事業は、回収した使用済み天ぷら油が、市民の目の前を走る市バスなどに利用され、循環の見える化につながり、回収活動をされている市民の方々は「あの市バスは私たちが走らしています」とも云われるぐらいで、「市民が支えるバイオディーゼル燃料」として広く浸透しています。
 また、技術的な観点から京都市では、我が国にバイオディーゼル燃料の品質規格がありませんでしたので、京都大学の先生などの学識経験者や関係事業者からなる技術検討会で平成13年に京都スタンダードと云う暫定品質規格を策定し、車両への円滑利用を図ってきましたが、この様な地産地消型のバイオディーゼル燃料化事業が全国的に広まる中で、国の方でも、平成21年に、バイオディーゼル燃料の車両への円滑利用促進する観点から品質確保法による強制規格で、バイオ混合軽油の規格が策定されました。
 今後は、この市民が支えるバイオディーゼル燃料が全国に普及拡大するための支援策として、ガソリン代替のバイオエタノール燃料の税制優遇がなされているように、軽油と混合するバイオディーゼル燃料に対しても軽油引取税(32円/ℓ)を免除する措置が、全国的に図られることも重要で、これらの税制優遇措置が国の方からバイオ燃料利用促進策として提示される様に、全国的な協議会組織を通して働きかけていく必要があります。

 ところで、この様な意義のある取り組みも、最近の自動車排ガス規制による新型ディーゼル車両では、軽油と沸点や引火点が違うバイオディーゼル燃料では車両の健全性に関して技術的課題が生じてきており、市民が支えるバイオディーゼル燃料化事業を次世代につなげる取り組みが必要になってきました。
 そのため、新たに第2世代のバイオディーゼル燃料を目指したバイオ軽油実用化プロジェクトを環境省の地球温暖化対策技術実証研究事業として取組みました。続きは次回で紹介します。

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中村 一夫

 

【プロフィール】
中村 一夫(なかむら かずお)

昭和48年から36年間、京都市の環境行政に携わり、地球環境政策課や循環型社会推進課などの課長や施設部のバイオマス担当部長を務める中で、家庭ごみ細組成や水銀・ダイオキシン類・フロンなどの調査、更には、廃食用油燃料化事業の立ち上げや生ごみのバイオガス化実証事業などに取組む。平成20年からは、(公財)京都高度技術研究所 バイオマスエネルギー研究企画部長として、京都バイオサイクルプロジェクトなどバイオマス利活用の促進に向けた実証研究に取り組んでいる。なお、業務の一環で、平成18年には京都大学からエネルギー科学博士を授与された。


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