社会が必要とする市民活動の創発◎ 堀 孝弘 3Rのうち、2Rが大切だと言われるが ◎3Rのうち、2R(リデュースReduce、リユースReuse)が大切だと言われる。しかし社会を見渡すと、もうひとつのR(リサイクルRecycle)ばかりが目に入る。リサイクルは、大量生産、大量消費社会を維持したままでも社会に広めることができる。直近30年ほどを振り返っても、まずは、空き缶や紙など身近なリサイクルが市民生活に浸透した。その間、缶飲料(この後のPETボトルも含めて)や紙製品などの消費は大きく拡大し、リサイクルは消費を後追いしながら発展したと言える。一方、2Rの推進には、生産者や流通・販売事業者の協力が必要になる。市民団体にとってそれは高い壁でもある。そのうえ2Rを後押しする政策も弱い。そのような状況ではあるが、各地に先進的事例が生まれている。それらはまだ「芽」かもしれないが、それらの実現プロセスの中に、どの地域にも通じる成功のカギが見つかるのではないだろうか。各地の2R推進活動を概観しよう。 ◆各地の2R推進活動 ●グリーンコンシューマー活動 環境対策に熱心なスーパーを冊子などで紹介 ◎はかり売りやノートレイでの精肉販売など、容器包装の削減に寄与する販売方法など、地域のスーパーマーケットの環境対策を評価し、冊子などでわかりやすく消費者に伝える活動として「買い物ガイド作成活動」がある(注1) 。 ●リユース食器レンタルで、祭り・イベントでの容器包装ごみを削減 ◎千里リサイクルプラザを拠点にした「エコイベントプロジェクト」や、京都市中京区に事務所を置くNPO法人地域環境デザイン研究所ecotoneなど、現在全国41団体がリユース食器レンタルを実施している (注2)。 ●「減装(へらそう)商品」、減装ショッピング ◎神戸大学に事務局を置くNPO法人ごみじゃぱんの活動。より包装の少ない商品を「減装(へらそう)商品」として認証し、店頭でのPOP掲示でわかりやすく表示。消費者の購買行動だけでなく、生産者のモノづくり、流通事業者の売り方にも影響を与えている。 ●容器包装お返し大作戦 ◎東京都日野市が地域の市民団体や事業者と協力して推進。行政が資源回収していたペットボトル、トレー、牛乳パックを、販売したスーパー等の店頭回収箱に「お返し」するよう市民に促すもの。目的として「容器包装削減・使い捨て商品の削減」「拡大生産者責任の強化」「毎年約7億円のリサイクル費用の軽減」などがある(注3) 。 ●地域をあげ全店でのレジ袋無料配布停止協定の実現 ◎福井市では、福井市くらしの会の働きかけで、2009年16事業者163店のレジ袋無料配布停止が実現した。数年にわたる市民啓発を戦略的に取り組み、2008年には消費者アンケートで「レジ袋の有料化に賛成」が80%に達し、その数字を示して事業者の納得を得て、翌年の一斉実施を実現した。 ●日本ワンディッシュエイド協会、リユースカップの取り組み ◎使用済み陶磁器をリサイクルしたスイーツ容器を作成。ケーキ屋さんに使ってもらい、さらにデポジットを活用して、リユースする活動を展開。徐々に賛同店舗を増やしている(注4) 。 ◆問題解決の活動を創発する力 ◎これら以外にも各地に魅力的かつ効果的な活動が創発されている。また市民団体にかぎらず、3R・低炭素社会検定 実行委員長の浅利美鈴氏のように、研究者のなかにも地域実践活動に取り組んでいる人もいる(注5) 。 ◎では、このような活動は、どのように生み出されるのだろう。地道に活動していれば、実現するものでもない。日本ワンディッシュエイド協会の樽井雅美さんに、NPO法人環境市民主催セミナーに講師依頼をした際、この点を尋ねた。樽井さんがまとめてくれたのが以下の9条。 =========================================================== 1.とにかく、やりたいと思うことを自分自身が思いっきり楽しむ。 2.ぶれないビジョンをお経のように唱え続ける。 3.現場の話を聞き続ける。現場を観察する。 4.小さな成功を思いっきり喜ぶ。喜びを分かちあえる人に話す。 5.失敗も包み隠さず話す。 6.今の活動以外の個人的なネットワークに呼びかけてみる。 7.小学校4年生が理解できる形に落としこむ。 8.自分は幸せかぁ〜 みんなが幸せかなぁ〜と考える。 9.できるかぎり素人であれ、おおらかであれ。 =========================================================== ◎環境問題の深刻さを目の当たりにして、問題意識を持つ人は居ても、その解決・改善のために新たな活動を創発できる人は少ない。上記の9条には、その「壁」を超えるためのヒントが凝縮されている。心に芽生えた問題意識を具体化し、その解決・改善の活動に必要な情報や仲間を引き寄せ、幾度の挫折や失敗ですら糧とし、燃え尽きずに活動を継続するためのヒントである。 ◎それは行動特性(コンピタンシー)とも言える。行動特性は知識や技能(スキル)と違い、簡単には修得できない。しかし「性格」とも違い、変えられないものでもない。上記のような指針を常に意識することで、多少でもこのような境地に近づけるだろう。 ◎検定の合格はゴールでなく、学習の課程で得た情報や知識を社会に役立ててこそ意味がある。上記の9条は、地域実践活動の創発にかぎらず、自己実現のための指針としても役立つだろう。多くの人に活用してもらいたいと思う。 注1) 3R低炭素検定公式テキスト第1章「グリーンコンシューマー」の項を参照。 注2)http://www.reuse-network.jp/network/ を参照。 注3) リユース食器、減装ショッピング、容器包装お返し大作戦の3事例は、筆者のブログ「各地の2R先進事例 勇気の出る活動報告会・内容報告」でも紹介している。 http://www.kankyoshimin.org/modules/blog/index.php?content_id=161 注4) 福井市くらしの会と日本ワンディッシュエイド協会の活動は、堀ブログ「参考事例の宝庫 市民活動の未来を拓くセミナー第1回報告」でも紹介している。 http://www.kankyoshimin.org/modules/blog/index.php?content_id=247 注5) デパートにおけるクリスマスプレゼントのノーラッピングの取り組みなど。注4で紹介した筆者のブログ「各地の2R先進事例 勇気の出る活動報告会・内容報告」でも紹介している。 |
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