山口 茂子 (東京都目黒区)
全国のたまご、リーダーのみなさん、こんにちは。東京は日に日に朝晩の寒さが身にしみるようになってきました。足元も冷えるようになってきたので、私は部屋で過ごすときに、お気に入りのオーガニックコットンの厚手の靴下をはいています。みなさん防寒対策はどうしていますか? 今回は、東京自由が丘商店街のミツバチを活用した緑化の取り組みを紹介します。 (http://www.jiyugaoka.or.jp/eco/index.php)森林化計画HP (http://www.jiyugaoka.or.jp/okabachi/index.html)丘ばちプロフェクトHP 自由が丘は、住みたい町ナンバーワンに選ばれたり、おしゃれな町として雑誌で紹介されたりと、都内ではとても人気のある町です。 東京の方はよくご存知かもしれませんが、自由が丘の魅力は、たくさんの個性あふれるお店が駅を中心に平面的に広がって、ほかにはない素敵な街並みを形成しているところにあります。お店の種類もまちまちで、おしゃれなカフェやレストランからラーメン屋さん、昔からの老舗や人気のチェーン店と1日歩き回っても飽きません。そんなわけで休日は家族連れからカップル、若いグループから年配のグループまで、本当にさまざまな人でにぎわっています。 そんな賑やかな、いかにも都会的な街にミツバチ?森林化? はじめて聞いたときは、その光景がイメージできませんでした。 そこで自由が丘商店街振興組合様にお願いして、直接お話を伺いに行ってきました。ご案内いただいたのは、温かいほんわかな雰囲気と熱心に取り組んでおられる情熱的なところが魅力的な事務長の中山さん、そしてきびきびとしてキュートな雰囲気の井ノ口さん。 お忙しいなかを快く取材の申し出にご了解をいただきありがとうございました。 まず、私はハチたちのお世話をしにいくみなさんに同行させていただきました。 待ち合わせは商店街のインフォメーションセンターです。 中山さん、井ノ口さんのほかに慣れた様子のボランティアの方も集まっています。 さっそく、皆さんのあとについて、ミツバチを飼育している小さなビルの屋上にあがります。私の住む町からも近いので、休日にはたびたび訪れるのですが、この写真のように高いところから自由が丘を一望するのは初めてです。 人が集まる街にはよくある大規模な高層の商業施設やマンションは見当たりません。そのかわり小さなビルやマンションなどが密集しています。その隙間に、写真ではわかりにくいですが、緑が点在しているのがわかります。 この小さい緑がハチにとっても人にとっても、実はとても大きな存在だということは、この日お話をうかがいつつ一緒に歩かせていただいて深く心に残ったことのひとつです。 |
インフォメーションセンターは小さくかわいい建物です。 自由が丘はこんな小さな路地がたくさんあります。 | 屋上から見た自由が丘の街です。 小さなビルやマンションが密集しているのがよくわかります。 |
さて、緑の話の前にハチをご覧ください。 ボランティアのみなさんは、どんどん着替えて、持ち場について作業を進めていきます。ハチの確認作業は、とても重要な作業です。一枚、一枚丁寧に木製のハチの巣?から板を取り出して、ハチの様子を慎重に観察しています。この日は、木箱のなかにごきぶりが紛れ込んでいるようでした。さすが、みなさん、キャーキャー言う方は一人もおらずさっと捕まえてすぐに一件落着。女王バチも元気にしている様子です。 「ハチの世話は本当に手がかかるんですよ」と中山さん。やってみないとわからない苦労が山ほどあるようです。興味のある方はブログでもいろいろ紹介されていますので、アクセスしてみてくださいね。「隊長」として登場しておられるのが中山さんです。 |
白い防護服に身をつつんで一生懸命作業するみなさん。 夏は暑くて大変だそう。 私もネットのついた防止を貸していただきましたが、汗をかいてもふけません。 | 女王バチ |
ここで私の一番の疑問、なぜミツバチなのか。 自由が丘では、森林化計画という街を緑でいっぱいにしよう(ここではボーボー化計画と呼ばれています)という計画があります。 このボーボー化に一役買うのがミツバチたちなのです。ミツバチが活発に活動すれば、受粉によって緑は活性化します。また、ミツバチが街のシンボルになることで、インパクトにもなり、さまざまな面での街の活性化にもつながります。ハチは緑を必要としているし、緑はハチを必要としている、といえるのでしょうか。 このプロジェクトのはじまりは、街に緑を増やそうという環境に対する啓発活動や普及活動のひとつとしてミツバチを飼ってみようだったそうです。 今はその輪がどんどん広がっています。たとえば、ミツバチを通じて商店街の人たちとこの街に住む人たちとの連携ができたそうです。 ミツバチの世話をするボランティアの人たちは商店街の人と住宅街の人が参加し、協力しあっています。ボーボー化計画に協力して、積極的に緑を植える場所を提供してくれる人も出てきているそうです。 ハチミツを使ったスイーツを販売するお店もあります。 緑化については、確かにこの街には大規模な緑地があるわけではありません。でもよく見てみると、小さなスペースはたくさんあります。ベランダや窓辺、小さなビルのわずかな敷地、そういう小さいスペースをボーボー化していくことで、広い面ではないけれど、グリーンのベルトができあがります。ハチたちは、このグリーンベルトをたどって蜜を集めることができます。お店の前の小さなスペースや自宅のベランダにプランターをおくことで誰でもこの計画に参加できるというのもすばらしいことです。 「あそこにも植えられます。あそこもボーボー化計画に使わせてもらえるんです」と話す中山さんは本当にうれしそうです。 とくに積極的に植えているのは、ハニーサックルというミツバチが大好きな植物で、真冬でも枯れることがないそうです。 以前、東京の港区内にあるエコ施設を見に行ったときに、建物の敷地の外に本当に小さな緑と湿地スペースが作られていて、小さな虫たちのためにこのスペースを作っているという説明がありました。また、果物を作っている農家の人のブログで、鳥が食べる分の木をいくつか残しておくと、鳥は全部の実を食べつくすのではなく、残している木の分だけ食べるようになったと書いているのも見たことがあります。人間がどこもかしこも開発してすべて自分たちのために使うのではなく、少しでもほかの生き物たちのために使えるように考えるのは素敵なことだと思います。 |
こんな小さなスペースを使って、ボーボー化は進められています。 |
土がなくても大きな鉢を使ってたくさんの植物を植えていきます。 |
インフォメーションセンターの前もこのとおりです。 |
そして、この地道な取り組みによって、もう1つすばらしい効果が生まれています。 それは、駐輪問題の解決です。どこの町でも駐輪場以外の場所に大量に自転車がとめられ困っている場所があるかと思います。自由が丘にもそういう路地があり、いくら撤去してもきりがなく、困っていたそうです。ところがその場所に、プランターを設置したところ、ぴたっと駐輪がなくなったとのこと。 「最初はいたずらも覚悟していましたが、携帯で写メを撮ったり、世話をしていると声をかけてくれる人もいます。北風と太陽の話で言えば、怒っていたちごっこをしていたのが北風で、ボーボー化は太陽ですね」 こういうふうに街の問題が解決したらストレスもなくなりそうです。それに緑の効果ももちろんのこと、一生懸命お世話をして育てている中山さんたちの気持ちがさらに効果をあげているような気がしてなりません。 |
駐輪で困っていた路地もこんなにきれいになっています。 植えられているのはハニーサックルです。 つる性植物なので、すくすく伸びて上の金網まで到達するのが 楽しみです。 |
「人の心も育っている」中山さんのこの言葉のとおり、街が緑や生き物と密接にかかわっていくことの効果は計り知れないものがありそうです。 商店街だけでなく、たとえば職場や学校、地域や自宅などできるところで緑や生き物を暮らしのなかに取り入れていくことで、都会でも緑は広がり、細くてもグリーンベルトになり、人と人の連携も広がり緑と人の環ができあがっていけるかもしれないと、すがすがしい気持ちになりました。 都内にお住まいの方は、ぜひ自由が丘を訪れて、路地を回って緑を探してみませんか。歩き疲れたら、ハチミツを使ったスイーツも購入できますよ!(詳しくはブログで探してみてくださいね。) |
インフォメーションセンター前のハニーサックルもすくすくのびています。 |
今月も最後まで読んでくださってありがとうございました。