vol.4 3Rx低炭素社会に向けて  浅利 美鈴


3R x 低炭素社会に寄せて◎◎◎浅利美鈴


3Rと低炭素社会についてセミナーなどで話すようになって、数ヶ月が経つ。
そもそも、「ごみ」が専門の私にとって、「気候変動・地球温暖化問題」やそれを克服する「低炭素社会」は、触れてはならない世界のように思っていた。
「ごみ」で精一杯なのに・・・と。
当検定の公式テキストを編集するプロセスでも痛感していたが、本当に重く深い課題である。 特に、気候変動は、国際交渉の歴史も長く、まるで物語のように展開している。 また、英語のキーワードも多く、その略字を覚えるだけでも一苦労、なかなか物語にもついていけない。 そう気が重くなりかけたときに救われる一文があった。

「市民の目線からは、まず、国際交渉について関心を持って見守るとともに、交渉とは別に温暖化を防ぐ行動を取っていくことで、各国の利害や戦術を超 えた地球規模の取組に向けた協力ができます。市民が声を上げ、実際に温暖化対策の行動をとることで、各国が利害を超えて協力していく雰囲気を作っていくこ とが、市民にできる国際交渉の成功に向けた取組になるでしょう。」
実際にタフに国際交渉の場にも立ち会う執筆者からの原稿であったが、視界が開ける想いであった。
国際交渉が遅々として進まないように見え、何をどうしたらよいかわからず、「市民一人ひとりが頑張ったところで・・・」ともどかしいような思いや無力感を感じることもある。
しかし、それは違う。
温暖化対策の行動をとり、低炭素社会を目指すことは、国際交渉の如何に関わらず重要であり、国際交渉が複雑化する今、かえって、市民の実態ある取組の方がパワーを持つかもしれないとも思えてくる。

テキストを編集しながら感じたもう一つのことは、3R(循環型社会)と低炭素社会は、切り離せないということである。
3R部門と低炭素社会部門とで、別冊テキストにするという可能性もなかった訳ではないが、一冊にこだわって良かったと思う。
テキスト内では、それなりに部門別に分けてみたものの、明確に分類できないものも多かった。

特に、暮らしや活動に関わる知見はそうである。
既に、私たちは、両方を視野に入れて行動しているのである。

しかし、その関係性について十分に議論や考察ができているだろうか?
両方を満足できること(win-winの関係)もあるが、時には、あちらを立てればこちらが立たずという状況(トレードオフ)になっていないだろうか?
3R・低炭素社会検定実行委員会では、今はまだ、両部門を扱う宣言をし、テキストや検定試験の中で同居させたに過ぎない。
しかし、目指すは、2つの視点の融合に向けた議論や検証の場、プラットホームを作っていくことである。
交渉というスタイルではなく、対話や実践・検証、知見の蓄積・交流をもって、持続可能な社会を目指す一端を担えるよう、成長できればと考えている。
参加者により「育てられる検定」として、今後とも様々な形での参画をお願いしたい。




浅利美鈴

■プロフィール: 浅利 美鈴 (あさり みすず)
現 職 3R・低炭素社会検定実行委員長/京都大学環境保全センター助教
略 歴
2000年、京都大学工学部地球工学科卒業。
2004年、工学博士。研究テーマは「ごみ」。京都大学のエコキャンパス化にも取り組む。また、学生時代に「京大ゴミ部」を立ち上げ、環境問題の普及啓発・教育活動に取り組みはじめる。2003年には「京都ごみ祭」を開催。
2005年からは、京都議定書達成に向けた「びっくり!エコ100選」や「京都議定書バースデーウォーク」などを展開。国や地方自治体の各種委員も務める。


ページの先頭へかえる