「紙おむつ」の再資源化リサイクルシステム◎ 松藤 康司
3R・低炭素社会に向けた取り組みの一つとしてのリサイクルを考えてみたいと思います。高齢化社会と環境問題に直面している 21 世紀は「循環型社会」の構築が急務となっています。世界一の長寿国日本で年々深刻になっているごみに「使用済み紙おむつ」があります。 紙おむつリサイクルシステムの特徴は、筆者らが独自で開発した水溶化技術により、使用済み紙おむつから上質バルプを取り出すことです。また、本システムより分別回収された上質パルプは再生紙おむつの原料として再利用する一方、残さとして回収された低質パルプ、高分子吸収剤、汚泥も緑化事業の助剤として土壌改良材や代替肥料の原料として光合成によって資源を再生し、また水の循環利用もできる、「 3 つの循環系」で構成されたシステムである点が特徴です。将来的には紙おむつの原料となる綿花、ハーブなどを栽培することも考えています。本紙おむつのリサイクルシステムは脱焼却で森林伐採の負荷の軽減に貢献し地球に優しい資源循環を兼ね備えた技術で「分解」から「合成」へのブレークスルーの新しいリサイクルシステムです。 本リサイクルシステムが普及するための今後の課題は、原料である使用済み紙おむつの安定供給が困難なことです。これは社会的に紙おむつのリサイクルフローが確立されてないことに起因します。現在、使用済み紙おむつは、幼児、在宅介護者のいる家庭から出るものを一般廃棄物として、病院や福祉施設から出るものは一般廃棄物又は産業廃棄物として回収されその大部分が自治体や民間の焼却施設で焼却処理されています。 全国で焼却される使用済み紙おむつの発生量は、子供を含めると年間 20 0万トンを超えており、この量は 2 つの政令市福岡市と北九州市の年間ごみ排出量に相当します。これらを回収することが可能になると低炭素社会に貢献できる飛躍的な使用済み紙おむつリサイクルプラントの普及が望めます。しかし現在使用済み紙おむつに関する法的な規制が無いために焼却を中心として野放しにされているのが現状です。将来的には紙おむつをリサイクル可能な資源物として「指定品目」に出来れば脱焼却、リサイクル、高齢化支援のシステムと同時に世界の貴重な森林の保護にもなるのです。 それでは、大人用紙おむつの使用量から、伐採される森林を考えてみましょう。平成 18 年度で使用される大人用紙おむつは、乾燥重量当り約 23 万トン(使用済み当りでは約 4 ~ 5 倍重くなる)であり、その中に含まれるパルプの割合は 67 %( 15 万トン)と推測され、立木(直径 14 センチメートル、高さ 8 メートル)に換算すると約 300 万本になります。立木 1 本が成長するまでに 20 年~30 年かかると言われており、 1 年間で膨大な量の立木が伐採使用され、私達が愛する森林(Love Forest)が年々消失している事が分ります。これを世界規模で見ると、一例として中国の経済発展と高齢化社会( 2007 年度、 65 歳以上全人口の 7 %)への著しい速さ考えただけでも、また先進国が年々高齢化社会になっていることを考えると、今後、紙おむつの原材料の確保は深刻になる一方と言えます。また、大人用紙おむつを 3 年間使用した場合、 1 人 1 日 5 枚紙おむつを使用したとして計算すると、パルプ 274 キログラムになり、立木に換算すると 5 ~ 6 本に相当します。 紙おむつと森林伐採問題を考えると将来の若者は二十歳の成人式の記念樹として高齢化した自分の紙おむつのために身近に苗木 5 本を植樹する必要があるかもしれません。一方、筆者らの紙おむつリサイクルシステムに対して支援の輪も徐々に広がっています。即ち、「ラブ・フォレスト」サポート倶楽部が中心となり、「あなたに人生の華を贈りたい」をテーマに高齢化支援、リサイクル、環境保全をシルバーファッション(博多コレクション)を通して考える催しを行なっています。今年も、福岡市内のデパートで使用済み紙おむつから分離した低質パルプ、汚泥で育てた綿花から綿糸を作り、綿布を紡いで高齢化支援の作品を発表します。また、「紙おむつ」に代る新しい名称「ラ・モレーヌ」「パンジー」そして「グラン・パン」等新しいコンセプトに基づいた下着感覚の紙おむつも提案する予定です。 |