Vol.21  低炭素杯2012とがれき素材から制作したトロフィー  菊井順一



低炭素杯2012とがれき素材から制作したトロフィー
-思いをつなぐ、未来へつなぐ-
菊井 順一


平成24年2月18日、19日に東京ビッグサイトで延べ1500人が参加した「低炭素杯2012」が開催されました。ここで41出場団体から栄えある環境大臣賞(グランプリ、金賞)を受賞した出場団体に石巻のがれきを素材にして制作された「低炭素杯2012トロフィー」が授与されました。

「低炭素杯」は、次世代に向けた低炭素な社会を構築するため、学校、家庭、有志、NPO、企業などの多様な主体が全国各地で展開している地球温暖化防止に関する地域活動を報告し、学び合い、連携の輪を拡げる「場」を提供することを開催趣旨とし、昨年から民間資金を財源として開催され、今回2回目である(当事業は、平成20年度から平成22年度の3年間にわたって開催され、平成21年の事業仕分けであえなく廃止の憂き目をみた“一村一品・知恵の環づくり”事業の後継である)。今年度は、L I X I L、セブン-イレブン記念財団、日本マクドナルドなどから支援を受け、参加いただいた多くの方々に感動と元気を持ち帰っていただくことができました。

「低炭素杯2012」では、東日本の出場団体を中心に地域レベルでの温暖化対策、節電対策が震災復興支援の意義をも持ちうることが、説得的に示し得たと自ら評価しています。とりわけ石巻市立湊小学校の6年生の児童の方々が、涙と勇気と元気を形にして、造形家の齊藤公太郎氏とともに、環境大臣賞のトロフィー制作に力を注いでくれた事には、会場から大きな拍手と感動が湧き起こりました。

「低炭素杯2012」において環境大臣賞受賞団体へ授与される「低炭素杯トロフィー」は、造形家の齊藤公太郎氏が、石巻市のがれきを使って東日本大震災で被害を受けた石巻市立湊小学校の子ども達と協働で制作しました。また、この時、子ども達自身も東日本大震災を乗り越えて卒業を迎える、自分自身への記念トロフィーを制作しました。

トロフィー制作にあたっては、昨年12月齊藤氏が石巻市立湊小学校で6 年生を対象に「低炭素杯2012」トロフィー及び子供たちの卒業記念トロフィーの制作についてオリエンテーションを行い、本年1月には同氏が再度石巻に赴き、2日間にわたり6年生の卒業記念トロフィー制作を指導しました。その際、同氏が制作を手がけた「低炭素杯2012」トロフィーに子ども達のメッセージが書き込まれました。

「低炭素杯2012」表彰式でのトロフィー授与に先立ち、司会者が制作者である齊藤氏に“思い“を伺いました。

司 会: 齊藤さんはこのトロフィー制作のお話があったときいかがでしたか。

齊藤氏: 私はものを作る人間です。この大震災に対し、ものづくりのなかで何かを表現したいと考えました。自分ができる中で役に立ちたいとずっと思っていました。これは与えられた機会なんだなと思いました。

司 会: トロフィー制作のイメ-ジをどのように。

齊藤氏: 低炭素杯のトロフィー制作であるわけですが、これと大震災とどう結びつけていくか。未来を担う子ども達が、いま一番助けを求めている。そこにどう手をさしのべるか。彼らの思いをどう引き出していくのかを考えました。

司 会: 今回のトロフィーの素材について教えてください。

齊藤氏: 石巻の湊地区のがれきを使用しました。がれきは子ども達の家であった可能性が高い、いや街そのものでした。低炭素杯のトロフィーはもちろん子ども達自身のトロフィーもこのがれきで作りました。

司 会: 子ども達と触れ合っていかがでしたか。

齊藤氏: こういう子ども達がどう表現できるのか、不安でしたが、その中で子ども達は思っていることをどんどん形にしてくれました。そこに未来が見えたように思います。

司 会: 子ども達から低炭素杯で頑張る皆さんへのエールが形になったのですね。

また、同表彰式に招待された湊小学校の教頭先生からもお話しがありました。

司 会: 最初、このトロフィーのお話があったときどのように思われたのでしょうか。

教 頭: 普段の年の卒業制作とは違って、彼らはこの大震災を乗り越えて卒業にこぎつけました。齊藤さんの力を借りて、子ども達に自分たちはすごいことをしたんだと、自分が自分に対してトロフィーをあげるということをさせてあげたいと思いました。

司 会: 作る過程をご覧になっていかがでしたか。

教 頭: 真剣に作る様子、できあがった形を見てびっくりしました。齊藤さんの思いと子ども達自身の思いに感激しました。素晴らしい出来でした。

司 会: 伝えたいことがあるとお聞きしていますが。

教 頭: 皆さんのおかげで学校、子ども達が元気になりました。ほんとにありがとうございました。もうひとつは石巻、宮城のがれき処理が進まず復興が前進せずにいます。ぜひご支援ください。
子供たちは小学校を卒業し、この4月に中学校にあがりました。教頭先生は中学校の入学式に参列し、子供たちの晴れがましい姿をじっくり見てきたそうです。教頭先生は、「昨年は大変な1年でしたが、それゆえに味わえた貴重な体験もたくさんあった」と話されていました。
低炭素社会の担い手は今の子供たちです。「低炭素杯2012」トロフィーは、悲惨な大震災の経験を通じて、「低炭素杯2012」へその“思い”をつなぎ、“未来”をつなぐ役目を形として担ったと思います。
私どもは、地域の足元から、低炭素社会実現への“思い”を繋げ、協働の“環”を未来の地球に繋いでいく視点をもって「低炭素杯2013」開催へつないでいきます。


トロフィー 表彰式







菊井順一

【プロフィール】
菊井 順一
一般社団法人地球温暖化防止全国ネット
(全国地球温暖化防止活動推進センタ-)
専務理事・事務局長

【経歴】
昭和49年 兵庫県庁入庁
平成19年4月~平成21年3月 兵庫県環境管理局長
平成21年4月~平成22年9月 財団法人ひょうご環境創造協会専務理事
平成22年10月~ 現職




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