『 七転び八起に「ファイト!」 』 長谷川 弘 広島修道大学 名誉教授 親の介護づかれ、行政活動の評価づかれ等々、「~づかれ」という言葉を身の回りでよく聞きます。良かれと思ってがんばっているのに、うまくゆかず徒労感に苛まれるといったとてもネガティブな語感があります。近頃の表現を用いれば「コスパ」「タイパ」が極めて悪いということになるでしょうか。 環境の世界ではどうでしょうか。ウクライナ紛争で無駄遣いされる資源や環境破壊、気候変動で激化する自然災害、揺れるエネルギー政策に翻弄され一向に進まない核のゴミ処理、トランプ政権による懲りないパリ協定離脱と、目指す循環型社会も脱炭素社会も霞んでしまう状況が続いています。SNSやAI技術のスピーディーな進化を目の当たりにしていると、なおさら虚しさや焦燥感を通り越して絶望さえ感じてしまいます。 しかし、今でこそ当たり前になっている飲酒運転禁止やタバコ禁煙そして公害防止対策も、それらの課題認知から解決策の社会的定着まで何十年もかかりました。おそらく環境問題の多くは、短距離走でなく長距離走、しかも途中で歩いたり立ち止まったり、でもみんなで楽しく走れる市民マラソンをイメージしないと持続可能な解決は図れないのではないでしょうか。三歩進んで二歩さがる、疲れて止まることがあっても時間をかけリフレッシュしてまた歩き出す「七転び八起」のまさに持続性を体現することがとても重要だと思います。 3R検定試験や気候変動検定試験にチャレンジされてきた皆様の中にも「検定づかれ」や「環境づかれ」を感じたり、試験には合格したもののこれからどうしたら良いか迷っている方もいるでしょう。何事も煮詰まってしまうと長続きしないようです。少し他の事に目を向けてみる、いろいろな考え方や価値観にふれてみるといった気をまぎらすクールダウンも時には有効でしょう。この『ニュースレター「R」でつながる』もその一助になれば幸いです。中島みゆきの小さく控えめな、しかし図太く響く「ファイト!」の応援歌が聞こえてきます。 |
長谷川 弘 |
【プロフィール】
長谷川 弘
広島修道大学 名誉教授
環境コンサルタントとして日本国内及び海外20ヵ国以上で環境影響評価、経済評価及び環境管理計画づくりを実施。
教育研究専門分野は環境経済評価、環境行政論、環境アセスメント、農村環境など。