「今だからこそ、足るを知る」 村岡 良介 一般財団法人日本環境衛生センター 技術審議役 トップメッセージに度々編集長が登場することは、ニュースレターの私物化の批判をいただきそうで躊躇がありますが、毎月毎号情報の配信を続けるという状況において、期限になっても原稿を得られない事態に追い込まれることもあります。今回は、そのような事情もあっての対応ということで、ご理解ください。 私は、第1回3R検定が2009年1月に実施された当初から、縁あって実行委員会(運営委員会)に参画し、公式テキストの執筆と試験問題の作成に携わり、関東以東を担当として、広報活動や試験対策講習の講義、検定試験の実施に取り組んできました。その初期に知った言葉が「足るを知る」です。 京都龍安寺の蹲踞(つくばい)には、「吾唯足知」(ワレタダタルコトヲシル)の文字が刻まれていて、『知足あるものは、貧しといえども富めり、不知足のものは、富めりといえども貧し』という釈迦が『仏遺教経』で説いた「知足の心」と説明されています。ご存知のように龍安寺は石庭が有名ですが、石庭の石は実際には15個配置されながら、「『一度に14個しか見ることができない』ことを『不満に思わず満足する心を持ちなさい』という戒めの意味が込められている」と教わり、人生訓に出会ったような感銘を受けたものです。 そして、「大量生産、大量消費、大量廃棄」の社会経済構造から脱却するための行動指針に通じると思いました。しかし、この解だけでは、浅慮に「欲を捨てなさい」と聞こえます。 この「知足者」は、古代中国の書物『老子』の上篇第33章にも「知足者富」として収められています。釈迦と老子がどのようにつながるのか解明しておりませんが、老子によれば、「足るを知る者は富み、努めて行う者は志有り」となります。「自分(あるいは社会)が求めているもの、行っているもの、経験してきたもの、学んだもの、それらに対する満足を心得て、努力することにより志が宿る」と理解すれば、人生訓として、持続可能な発展を目指す社会の指針としての意味合いがより強くなるような気がします。
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村岡 良介 |
【プロフィール】
村岡 良介
・1956年 神奈川県川崎市出生、現在横浜市在住
・1980 財団法人日本環境衛生センター入所、現在に至る
環境カウンセラー、自然観察指導員として、講演・執筆活動に注力し、地域の環境保全活動に従事し、自然観察会を主宰
・2009 第1回3R検定より実行委員(運営委員)として参画し、関東地域のパートナーを担当、2019年よりニュースレター編集長
・2023 村岡環境カウンセラー事務所開設
・趣味はテニスとジャズ鑑賞