Vol.18 ~環境問題と3R・低炭素社会検定~ 中村 操


環境問題と3R・低炭素社会検定~ 中村 操


■環境問題を考えるきっかけ

私は前職が髙島屋のCSR推進室長という立場だったので、業務推進上、必要にせまられて様々な環境問題について考えざるを得なくなった。これまで一百貨店マンとして物売りのことしか考えてこなかった私にとって、就任当時は自分自身がどう動いてよいかさえ全くわからなかったというのが本当のところだった。毎日毎日環境に関する様々な知見と出会い、なるほどと思ったり、これは違うのではないかと思ったり、いわばパーツ、パーツの知見にまみれて全体像が掴めないというような状況だった。

■3R・低炭素社会検定との出会い

そんな時、髙島屋で京都大学との協力で数年前から毎年夏に開催してきた「びっくりエコ100選」というイベントを通じて、現在検定の実行委員長を務めておられる京都大学の浅利美鈴先生に出会い、検定の存在を知ることとなった。そのご縁から今は検定の実行委員を仰せつかっているわけだが、当初はもちろん検定について十分に理解して取り組んでいたわけではなく、実際に検定のことを少しずつ理解し始めたのは、第一回目の検定を受験をすると決めてその勉強を始めてからである。長い間試験というものから遠ざかっていたので、合格する自信もなかったが、立場が立場なので、落ちるわけにもいかないということもあり、ひらすらテキストを読みまくり、演習問題をやるという繰り返しで必死で試験に臨んだ。それが効を奏したのかはわからないが、なんとか無事に合格だけはできた。

■不思議な感覚

そうこうしているうちにこれまでばらばらだった知見がなんとなくつながってくるような不思議な感覚を覚えてきた。神経細胞が様々な回路でつながることで電気反応を起こすような感じだ。「この考えのもとはここにあったのか」とか「行政の動きの背景はこれだったんだ!」とかである。やはり物事は体系的に学んで初めて自分のものになってくるのだろう。検定のテキストには漫画家ハイムーンとしても有名な高月先生や、酒井先生らによる長年の蓄積により熟成されてきた京都大学ならではの廃棄物研究の知見が体系的に収められているため、私のような素人が学んでも自然と環境問題の全体像が見えてくるような気分になれるのかもしれない。最初にテキストを見たときは洗濯の仕方から世界の資源供給の問題まで随分幅広い課題設定となっており、これで本当に何か身につくのかと心配だったが、とにかく試験を目指してがむしゃらにテキストを読むことによって環境問題について少しは体系的に理解できるようになったような気がする。今では受験して本当によかったと思う。そのような自分自身の経験から少しでも多くの人に受験してもらいたいと考え、髙島屋としても毎年、必ず何人か受験してもらうようにしてきた。お客様から商品の環境影響等について質問があった時、いい加減に答えるのではなく、少しでも正しい知見で答えるのが小売業である髙島屋の責任だと考えたからだ。

■学び続けることの楽しさ

検定を受けてよかった事は他にもある。それは学び続けることの楽しさだ。
実は昨年起きた東日本大震災の当日、私は川崎にある東京電力史料館で、合格者のフォロー教育として元京大総長の尾池先生の講義を受けていた。尾池先生は俳句についても造詣が深く、確か導入は俳句のお話だったと思う。とても楽しくかつ有意義な講義だった。こともあろうに丁度尾池先生が地震のメカニズムについてのお話をされていたときに教室がぐらぐらとゆれ始めた。それがなんと東日本大震災だったのである。その直後、尾池先生には行政の関係者からひっきりなしに震災対応の相談などの電話が入り続けた。その後尾池先生は原発事故検証委員会のメンバーとしても活躍されている。このような素晴らしい講師の講義が直接聞けるというのもこの検定の大きなメリットだ。

■検定の本質

私は今でも本当に地球温暖化が進んでいるのか、その原因がCO2なのか正確には理解していない。しかしながらこの検定の中で学んだいくつかの知見については、やや自信を持って受け売りできる。例えば「限りある資源をできるだけ大切かつ有効に使おう」ということだ。温暖化やCO2の問題は大変難しい問題だが、我々が今、何をなすべきかについてはこの要点さえ押さえていれば、そうはぶれないですむ。そうしてみると我々の商売を始め、考えなければいけないことはたくさん見えてくる。エコ商品の販売をはじめ、髙島屋で取り組んでいる様々な環境施策においても検定受験後は例えば、なぜ髙島屋はこの商品を薦めるのかという理由に関してひとつのしっかりとした軸ができたような気がする。地球に暮らす上で、最低限の守るべき基本のルールが自然と身につく、それこそがこの検定の本質だと私は考える。合格者の皆さんもそれぞれこの経験を活かして各方面で是非活躍してほしいと願うものである。



nakamuramisao

【プロフィール】
中村 操

【略歴】
昭和49年 一橋大学卒業
昭和49年 株式会社髙島屋入社
平成17年
株式会社高崎島屋代表取締役社長
平成19年 本社CSR推進室長
平成22年~
株式会社髙島屋友の会代表取締役社長

(社外)
3R・低炭素社会検定実行委員
平成19年~ 日本経済新聞社消費ウオッチャー新商品評価委員
平成21年~ 群馬観光特使



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