Vol.177 「ゼロエネルギーオフィスにリノベーション」 大関 はるか

 

 


「ゼロエネルギーオフィスにリノベーション

大関 はるか

有限会社ひのでやエコライフ研究所 勤務


 今年度、新しく合格者となられたみなさま、おめでとうございます。
 1月21日(日)の合格者オンラインミーティングにご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。進行を担当しました大関はるかと申します。

 全国の合格者が集うと、お住まいも職業もご専門も見事に多岐に渡っていて、それでいて関心は同じで、本当に豊かな交流、情報の場でした。
 過去の合格者もご参加歓迎です。ぜひ来年もお集まりくださいね!

 さて、私は京都にある(有)ひのでやエコライフ研究所で働いています。
 2023年は、新しい事務所探し→ゼロエネルギーの事務所へリノベーション→新事務所での日常 の全てを経験した年になりました。

 日本でも中古物件でのゼロエネルギーが当たり前になる世の中はもうすぐそこのはずですが、ほんの少しお先に実践したいという思いから、太陽光パネルを充分に設置できる日当たりの良い物件を探していました。

 庭に土があって生ごみを還せたり、雨水をトイレに活用したり、断熱をしっかりして冷暖房の使用を控えられたり、とイメージは膨らみます・・。
 加えて、中古物件の空き家の問題(注)も深刻です。

 いずれこれらが全部廃棄物になることを想像すると、少しでも寿命を延ばし活かす手段を示したいという思いもありました。

 (注)ストック住宅数(中古物件数)は総世帯に対して約16%多く、空き家率は上昇を続けている(総務省の住宅・土地 統計調査によると2018年時点では空き家数は849万戸。この20年で約1.5倍に増加。長期にわたっての不在の住宅などの「その他空き家」は349万戸で、この20年で1.9倍に増加)。また日本の滅失住宅の平均築後年数は、アメリカが67年であるのに対し、32年と半分以下となっていることから、世界的に見て「住宅後進国」との指摘がある。ストック住宅のうち約70%は断熱性能が低く、耐震性能も低いことから、ストック住宅の性能改善による長寿命化は、家庭部門のゼロカーボン化において日本の課題となっている。

 建築家の方に相談すると、築50年を超えた頃のこの物件は、断熱も耐震も全く施されていない時代のもので、これなら全部壊して作り直す方が良いというアドバイス。

 私たちは、それではごみも大量に出てしまうし、新しい資源を使い過ぎるから、なんとか活かせる分は活かしたいと言いながら、エコ改修が始まりました。

 1Fの内装はほぼスケルトンに解体しましたので、それなりにごみは出ました。13トン強!!

(1Fの床下、壁、天井などは、スケルトンにしたために耐震補強を施せました。)
 公式テキスト第9章12節の建設廃棄物だけでなく、解体ごみも大量に出てしまう懸念。

 第8章3節の日用品の修理・修繕ではなく、家そのものの修理・修繕をしたいという思い。

 大工さんたちの力を多分にお借りし、京北(けいほく)の桧と杉をふんだんに使い、将来洗って使い直せる羊毛断熱や、京都の町家にずっと伝わる建築用油の荏油や自然塗料の柿渋やベンガラを使いました。

 漆喰や和紙を使ったり、近年出てきた自然素材の断熱材であるフォレストボードも使いました。

 部分的には、コンクリートや石膏ボードも使いました。
 また大勢の人に参加してもらって床を張ったり、壁を張ったり、漆喰を塗ったり、油を床に塗ったりもしました。
 ボンドを使わずに張った床や壁の材は、再利用も可能かと思います。

 30ミリの杉の床貼りワークショップ          桧の床板張りのワークショップ

 白いのは羊毛断熱                   黒いテープは気密テープ

 選択の日々で、妥協もたくさんしました。もっともっとできただろうとも思いますが、ひとまず、ゼロエネルギーのシェアオフィスができあがりました。

 まちなかではありますが、京都産材に囲まれたオフィスで庭にやってくる鳥のさえずりも聞こえて、その上ゼロエネルギーで仕事をしていると思うと、心身とても気持ちが良いです。

 2Fに3部屋あり、小さな団体や企業、個人事業主の方に入ってもらえるようにしました。
 以前もオフィスをシェアしていたのですが、社外の方との何気ない会話や仕事の相談などは、日々を豊かにしてくれます。

 京都で新規事業を立ち上げられる方、事務所移転をお考えの方、ゼロエネルギーのオフィスで仕事をしませんか?一度内覧にお越しくださいませ!

 

 

 

 

 

 

 

 フォレストボードの上に和紙を         柱を活かして4人掛けデスクに

 貼っていってるところ_左が大関

 

 この原稿をだいたい書き終えた後に、能登半島地震が起き、たくさんの木造住宅や耐震補強をした建築物が倒壊したことを知り、とても複雑な気持ちになりました。石川県珠洲市だけでも、65年分の廃棄物に匹敵するとニュースで知りました。

 一瞬で人の命や生活を奪う可能性のある災害と、じわじわと生きものの命や人の生活を奪う可能性のある待ったなしの環境問題。どちらにも同時に取り組む時代に私たちは生きています。私たちにしか解決できない問題です。

 合格者の輪、仲間を広げて、共に解決の道へ進みましょう!

 最後になりましたが、被災されたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。

 みなさまの生活が1日も早く平穏に復することをお祈りしています。

 

     

大関 はるか

 

 

 

【プロフィール】

大関 はるか

有限会社ひのでやエコライフ研究所 勤務

1979年リビア、トリポリ生まれ。栃木県宇都宮市育ち。長崎とデンマークで学び、2003年より京都の(有)ひのでやエコライフ研究所に勤務。
2020年40歳で自宅出産(@musubi助産院)し、エコな子育て&共同生活満喫中。
これまでにシェアメイトは20人を超える。
外国人学生のホームステイのホストファミリーをして、エコライフを伝導中。

10年空き家だったところをリノベーションして引っ越した様子は
ごみの一歩手前を考える 『循環とくらし』 第8号
片づけと2R ~捨てないことからはじめよう!~   
『時間を暮らしに保存する ~空き家から出たモノのリメイク・リペア奮闘記~』
http://jsmcwm.or.jp/edit/kurashi/08/072ohzeki.pdf

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