Vol.16~東北復興と資源循環社会の試み~吉岡敏明


「東北復興と資源循環社会の試み」~ 吉岡敏明◎◎


2011年3月11日に発生した東日本大震災は地震や津波を原因とした電気、ガス、水道等のライフラインの喪失、交通機関のマヒによる物資供給の寸断、いたるところに散在し廃棄物と化した「ガレキ」問題に加え、福島第一原発による被害の拡大等、甚大な被害をもたらすと同時に、これからの私たちの生活をあらためて見直す警笛を鳴らしました。現在、防災・安全とエネルギー問題等、今後われわれがどのように生活し、自然と共生を図っていくかを考えた復興に向けたシナリオが様々な立場で検討されていますが、3R・低炭素社会というキーワードが重要な要素に挙げられています。被災地が復興するためには、地域住民の安全で安心な生活の実現に重点を置いたビジョンづくりが必要です。豊かな自然は私たちに恵みを供給すると同時に脅威であることを再認識させたが、厳しい自然との共生と資源の循環に支えられた東北地方の生活や文化を再構築することが、持続可能な発展の原点になると思えてなりません。

そのためには、先ず、災害で発生した廃棄物を処理しなければ何も始まらないことは衆目の一致するところでありましょう。可能な限り環境面でも制度面でもリスクを低くして、適正に、且つ、可能な限りスピード感を持って取り組むことが不可欠です。さらには、単に撤去・処理という観点ではなく、自然との共生や資源という視点を盛り込んだ復興シナリオと結びつけた対策が必要であります。公表されているガレキの発生量は岩手県498.8万t、宮城県1583.8万t、福島県228.0万t、茨城県45万t、青森県80万t、その他の地域も含めて、2300万t以上にも達すると見積もられており、加えて津波堆積物も1100~1800万tと推定されています。

これらの災害廃棄物や津波堆積物を適正に処理するには、仮置き場への集積に対して先ず分別を徹底することであります。この分別によって「廃棄物」を「資源物」とすることができます。「早急にガレキを処理するのであれば、埋立や焼却でもいいのではないか」、「分別するのに手間と時間が掛かっては反って処理に時間が掛かる」という意見があります。しかし、分別することの意義には次の二つの視点があります。その1は、焼却施設と埋立地の確保の問題です。焼却施設や埋立地を新設するには広大な土地の確保と予算を裏付けなければなりません。さらに、地域住民の了解を得る必要があります。ガレキの「全て」を安易に焼却と埋立に頼ることは非常に危険な選択といえましょう。可能な限りリサイクルに廻すことで、廃棄物(資源物)を仮置場から搬出し、被災地のガレキをいち早く撤去することが望ましく、そのためにも、分別は必要最低限の作業といえましょう。

その2は、環境リスクの低減です。廃棄・処理しなければならないものの性状・成分が不明のまま根拠のない「安易な」埋立や焼却は、未来に大きな環境リスクを課すことになり、その修復にまた多くの時間と費用が発生しかねません。スピード感ある対応として分別という概念を組込む施策は、一見時間のかかる作業と思えますが、分別されたものを、現行のリサイクル法やリサイクル市場に適合させることで、総合的に処理が停滞することなく、スピード感のある適正な処理が行われます。これらを契機として、今後、健全なリサイクル市場が確立されるでしょう。現に、分別されたものの受入が始まっており、一方、分別されずに積み上げられたガレキはその行き場を失って、また最初から分別をやり直すという二度手間をかけているところが多く見受けられます。

東北地方はこれまで域外の廃棄物を最終処分地として受け入れる立場にありましたが、今回の震災廃棄物の処理を契機として、廃棄物を資源とした環境・エネルギーや素材産業、あるいは本当の意味でのエコタウン構想を再考できるものと期待しています。様々な廃棄物をどのように適正にリサイクルするか、またリサイクルすることにより派生する産業を東北域内で、さらには国内でどのように成長させていくか、様々な角度から多くの復興ビジョンが提案されそうな気配を感じます。特に、ガレキの多くを占める木質系ガレキ処理を、森林が豊富な東北地方のバイオマス資源を今後マテリアル資材やエネルギー原料として積極的に利用する呼び水と捉える試みが必要で、既にそれらの試みも始まっています。森林を健全に保全することは、結果的に農業や水産業にプラスの効果をもたらすことは広く知られています。北上川や阿武隈川に代表される多くに東北の河川流域にある森林から間伐材として発生した木材を、これらの河川を結ぶ日本最大の人工水路である50kmにも及ぶ貞山堀を使って地域の復興に役立ながら低炭素化に資する原燃料資材として利用されることに大きな期待をかけたいと思います。





吉岡敏明

【プロフィール】
吉岡 敏明(よしおか としあき)
1988年
東北大学工学部応用化学科卒業
1992年
東北大学大学院工学研究科応用化学専攻博士課程中退
東北大学工学部分子化学工学科 助手
1996年
博士(工学)取得
1997年
東北大学大学院工学研究科 講師
2000年
同 助教授
2002年
東北大学 環境保全センター 助教授
(この間2000年オランダ・アイントフォーヘン工科大学、
2001年
ドイツ・ハンブルグ大学 留学)
2005年
東北大学大学院環境科学研究科 教授

化学的手法を用いたプラスチックや金属のリサイクル技術開発や大気・水中の有害物質除去や高付加価値資源の回収技術開発に取り組む
研究室HP;http://www.che.tohoku.ac.jp/~env/index.html



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