Vol.153「チェルノブイリ原子力発電所・30km退避ゾーン内を視察して」 池北 實


「チェルノブイリ原子力発電所・30km退避ゾーン内を視察して」

池北 實(エコ京都 代表)

 

 

 

 


 本年度に第14回を迎える本検定も、第1回(2009年)から第2回までは「3R検定」として資源循環(循環型社会)を主眼とした検定でした。第3回(2011年)から地球温暖化防止(低炭素社会)も取り込んで、持続可能な社会を目指す現在の「3R・低炭素社会検定」になっています。
 当時は京都議定書第一約束期間(2008-2012年度)があり、日本の温室効果ガス6%削減目標を達成するために、広範な主体が温暖化防止活動に取り組んでいました。環境団体「びっくり!エコ実行委員会」もその一つでしたが、その活動の中から3R検定が産声を上げています。
 本検定の活用法としては、検定テキストや講習会などで環境問題を掘り下げて理解し、各々の立場で具体的なソリューションを考えることが大切です。私が計量・包装・検査機器メーカーに勤務していた時の事例を挙げれば、社内勉強会で食品トレーが環境問題になっていることを理解した開発部員が解決策としてノントレー包装機を開発し、ごみや二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。(ノントレー包装機 NTP Series | ごみ削減を強力にバックアップ https://youtu.be/SxQa9y7nrJw )

第1回3R検定合格証と第3回3R・低炭素社会検定合格証


 さて、私は大学で「環境監査」の講義を持っていますが、環境マネジメントの観点から処理困難な放射性廃棄物について強い関心を持っています。2018年にウクライナにあるチェルノブイリ原子力発電所及び30km退避ゾーンを視察して、関わる多くの証言映像や写真情報を取得することができました。講演や講義では詳細を教示していますが、本稿では放射性廃棄物について思索する素材として、若干の解説と共に、退避ゾーンの汚染状況を示唆する一部写真を紹介します。

ホットスポット(5.44μSv/h)

 

廃レーダー“Duga” (0.45μSv/h)

 

廃幼稚園(0.31μSv/h)

 

廃4号炉(0.70μSv/h)

 【解説】チェルノブイリ原子力発電所事故は、1986年4月26日1時23分(モスクワ時間)に当時のソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故であり、国際原子力事象評価尺度において最悪のレベル7に分類されている。(同じレベル7の東電福島原発事故の6.75倍の放射性物質を放出) ソ連政府は、事故から36時間後に原発周辺から住民の避難を開始。およそ1週間後の1986年5月迄に30km以内の住民(約11万6000人)を退避させた。事故から2年後には30km退避ゾーンのクリーンアップが行われ、高濃度放射性廃棄物は地中に埋められ、その上に標識が立てられた。
 事故の直後においては主に放射性ヨウ素による健康被害があったが、30年余りを経てストロンチウム90とセシウム137による土壌汚染が問題になっている。30km退避ゾーン内の植物中のセシウム137のレベルは上がり続け、地下の帯水層や湖・池のような閉じた水系にも汚染が移行している。

 

池北 實

【プロフィール】

池北 實

株式会社イシダ退職後にエコ京都を立ち上げ、今までに地球環境戦略研究機関(IGES)とのコラボで中国の上海交通大学、清華大学、国家発展改革委員会、地方政府、企業を訪問しての連携事業や環境調査委託事業などに携わって来ている。
滋賀県立大学においては非常勤講師として「環境監査」の講義を持つ。
エネルギー管理士、環境カウンセラー、環境審査員補。
徳島交流大使。趣味はヴァイオリン演奏。
自身のYouTubeチャンネルでは、1.14万人の登録者を持つ。
(IKEKITA Minoru https://www.youtube.com/user/utube0011ee )

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