Vol.119 「みんなで省エネ・節電に取り組みませんか?~国内初の「市民節電所」の活動で~」村木 正義



「みんなで省エネ・節電に取り組みませんか?~国内初の「市民節電所」の活動で~」

村木 正義

 検定合格、おめでとうございます。
 さぞ胸を膨らませていることと思います。
 自分のテーマを早く見つけて進んでください。

 実は私にもそんな時がありました。
 1996年にできたばかりの環境カウンセラーを受験し合格した時です。
 第二の人生を地球温暖化防止のための活動と研究にかけようと決め、それから20年間続けています。


◇いま求められる、市民のかしこい省エネ・節電
 地球温暖化が進み、国際的にはパリ協定が発効し、脱炭素社会へ大きくかじが切られました。
 日本はCO2排出量を2030年までに26%削減の目標を掲げました。
 家庭部門は39%削減ですが、良い方策が示されていないこともあり、この30年で50%も増えています。
 そこで市民と省エネ・節電に効果的に取り組める方策を示し、CO2排出削減を目指すことにしました。
 方策として、市民の取り組みを尊重し、協定・情報・経済的手段で支援する国内初の「仕組み」(図1)を提案し、250世帯の市民と一年間の社会実験を行い有効性を実証しました[注:1]。

   図1

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◇長期の取り組みを実現する「市民節電所」
 この仕組みを使った「市民節電所」[注:2]を広めるため、5年前に市民省エネ・節電所ネットワーク(以下NW。昨年3月にNPO法人に)を設立しました。
 現在26名の会員と、2016年にスタートさせた市民節電所「まほろば」(図2)の活動に注力しています。

   図2

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 市民はグループ単位でNWと協定を結び、1年間電気・ガスの使用量を毎月報告します。
 NWは情報交換の場や情報誌の提供に努め、1年後グループとして削減できたCO2削減量(カーボンクレジット、CC)を 1 kgあたり 2円で買い取ります。
 誰でもいつでも参加でき、継続可能なため、多くが3年目に入っており、現在11グループ77世帯になっています(図3)。

   図3

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 この間の活動規模は2000世帯・月で、途中脱落者ゼロ、CO2削減量は27トンです(図4)。

   図4

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 何故CCを買い取るのでしょうか?
 本来社会が成すべきことを市民がやったので、削減の対価をその人が受け取るのは当然と考え、NWが立て替えています。
 ですから、買い取ったCCは「CO2排出ゼロ宣言者」に活用してもらい、排出実質ゼロを実現してもらっています。
 この活動は低炭素杯2017の優秀賞受賞や、環境省グッドライフアワードの実行委員会特別賞を3年連続受賞など、高い評価を得ています。

◇今後の課題
 南アメリカの先住民に伝わる話に、燃えている森で、水を一滴ずつ嘴で運んで火の上に落としている一羽のハチドリの話があります。
 それを見て笑っている動物たちにハチドリは「私は、私にできることをしているだけ」と応えたといいます。
 地球温暖化防止や低炭素社会実現に向けた活動もこれに似ています。
 私たちに今できること、市民とともに省エネ・節電に有効に取り組む「市民節電所」を広めることをやっています。

 関心のある方、一緒にやりませんか?
 ご一報ください。


[注:1]: 村木正義(2015)「奈良県立大学研究季報」第25巻第3号1~38ページ(リンク先で閲覧可能)。
[注:2]: 節電によって生じた余剰電力は発電所を新設することと同じ価値があるという考えから「節電所(ネガワット)」と呼ばれています。
仕組みに従い省エネ・節電に取り組む市民(グループ)を節電所、 それらが集まった全体を「市民節電所(正確には市民省エネ・節電所)」と呼びます

 



【プロフィール】
村木 正義(むらき まさよし)

環境省の環境カウンセラー、省エネルギーセンターの家庭の省エネエキスパート、奈良県の環境アドバイザーなど。
奈良県立大学非常勤講師。
平成28年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞。
活動では2つの市民団体を立ち上げ代表等を務めたが、今はNPO法人市民省エネ・節電所ネットワークの理事長として、市民節電所の活動に傾注しています。
研究では環境経済学を学ぶため京都大学大学院に通い、経済学博士を取得しました。

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