vol.11 ~省エネと家族の絆 ~ 村岡 良介


~省エネと家族の絆~ 村岡 良介 ( 財団法人日本環境衛生センター)

今年2月の「省エネ月間」キャンペーンの実施に当たり、ある地方紙から、「今すぐに始められる家庭での効果的な省エネ活動を紹介して欲しい」と取材を受けた。省エネルギー普及指導員でもある私は、自らも家族と共に無理のない実践を心掛けながら、「家庭でできる省エネ活動」を紹介する機会が多い。例えば電気料金の契約種別を30Aから20Aに変更するだけで、電力量が制約されるわけだから強制的な節電効果が確保され、当然に基本料金と電力量料金が節約できる。電力使用の方法に意識して工夫を施せば、さらに省エネ効果が期待できる。このような例を紹介しようと思ったが、地方紙の取材には、色々と考えた挙げ句に「究極の省エネ活動は、家族で過ごす時間を増やすこと」を紹介した。

それから半月も経たない3月11日に東日本大震災が発生し、大津波の発生と原子力発電所の事故が重なって未曾有の大惨事となり、今もなお、国難とも言える厳しい状況が続いている。被災地の復旧・復興に向けた様々な取り組みが急がれる一方で、原子力発電所の事故は首都圏(東京電力管内)の消費生活や経済活動に広範囲に大きな影響を及ぼしている。大震災直後、電力の供給量が3分の2以下に低下したために計画停電が実施され、ライフラインや様々な都市機能が麻痺して大混乱となった。我が国の経済活動にも大きなダメージをもたらした。しかし、このあまりに乱暴で一方的な供給量の制約は、様々な問題は抱えながらも結果として消費量を供給量の範囲内に強引に削減させた。

私たちは、電力は需要に応じていくらでも供給されると信じていた。中越地震でも電力供給量不足という事態が起きた。でも計画停電は行われずに済んだし、電力が供給されなくなるという危機意識が醸成される機会とはならなかった。地球温暖化防止のために、家庭や地域、職場などの様々なステージで節電や省エネ活動が叫ばれても、多くの企業や生活者の行動につながり難い要因は、良くも悪くもこの危機意識にあるように思う。今回の計画停電の危機感は、消費者に節電への賛同をもたらし、ムーブメントとなっている。公共の場では照明が間引きされて薄暗くなり、駅の切符販売機は3分の1がはり紙と共に停止し、エスカレータも止まっている。でも苦情は少ないと聞く。結構不自由なくやっていけると、「足るを知る」を知った心境である。

エコファミリーに登録し、省エネナビゲーターを導入して省エネ活動に取り組んでいる我が家では、最近、団らんの時間が増えた。子どもの成長と共に難しくはなっているが、朝食と夕食はなるべく家族一緒に食べるようにして、夕食後はリビングに集い、会話を楽しむようにしている。「足るを知る」が話題になったかどうかは記憶にないが、30~40年前の日本の家庭ではごく普通の姿であったと思う。結果として、4、5月の我が家の電気料金が節約された。2月の地方紙のインタビューに「究極の省エネ活動は家族で過ごす時間を増やすこと」と答えたが、予想もしなかった東日本大震災によって、その実践への動機付けが強くなり、家族の絆も深まった。

私は、毎月定例の自然観察会を10年余り続けているが、休日は家族そろって外に出て、自然と触れ合うことを推奨している。これも省エネ活動になる。環境にも家計にも優しくて、家族の絆が深まる。



村岡 良介

【プロフィール】
村岡 良介(むらおか りょうすけ)
財団法人日本環境衛生センター研修広報部次長
環境カウンセラー、省エネルギー普及指導員、自然観察指導員
3R・低炭素社会検定運営委員
1956年、神奈川県川崎市生まれ、現在横浜市在住


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