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「未来に残したいリユースびんのしくみ」
◎ 今年2月、熊本県水俣市で開催された「ゼロ・ウェイスト会議」に参加した。 脱焼却と埋め立を理念として循環型社会を模索する4自治体の、年に一度の会議である。 詳細はひとまず省き、視察地のひとつ、水俣エコタウン内にある(株)田中商店「エコボ水俣」で見えた循環型社会の現実と課題を報告したい。
田中商店は、空きびん・リユースびん等の回収・洗浄・販売を手がける“びん商”である。 研究熱心な社長田中氏は、環境省の「循環型社会形成実証事業」(2003年)を受け、それまで使い捨ての対象であった900ml焼酎びんを「Rびん」という名称で新たに規格化し使い回す、リユースシステム事業を発案した功労者である。
構内のストックヤードに山高く積まれた空きびんのケース(P箱)は、北海道や関東から回収されたものが多いという。 一見、順調に稼働しているように見えるが、田中社長によれば「びん容器が絶滅危惧種となりつつある。」昨今のびん離れに歯止めが効かず、事業としては厳しいというのだ。
リユースの優等生とされてきたガラスの「びん」は、重い、割れる等の短所もあるが、安定した材質、気密性の高さ、そして、中身に有害物質が浸出する、味や香りが変わる、といった心配がない安全な容器という長所を持つ。 見直してほしいと願っているのだが、現状は“ペットボトル”が“リサイクルの優等生”として「大量生産」の傾向にある。 「容器包装リサイクル法」(1995年)の理念を示す「循環型社会形成推進基本法」(2000年)には、処理の優先順位が明記されているが、びん容器に明るい未来は見えてこない。
しかし、私は、田中商店の事業展開の手法を見れば、解決出来ない問題ではないと受けとめている。 田中商店で取り扱う900mlの焼酎びん(Rびん)は、近隣の酒造蔵元から全国に出荷されたものである。 その空きびんを回収し洗浄した後、南九州にある蔵元に戻るほか、醤油、酢などの別のサイズの調味料容器も、同様の仕組みで再使用されている。 こうした環境省の実証事業の成果を全国展開すれば、消費者の選択肢も広がり、リユースに触れる機会が拡大するのではないか。
今回、水俣を訪問して、水俣病の原因となった水銀汚染は、便利さを追求する「大量生産」が発端であったことを再確認した。 「先人の知恵で使い回してきた“びん容器”とその“しくみ”を無くしてもいいのか?」 “たかが容器、されど容器”…容器の大量生産と大量廃棄について、改めて考えている。
これまでの主な活動: 出前講座、ごみ雑学考座、フリーマーケット、フィールドワークほか
所属団体: 容器包装の3Rを進める全国ネットワーク 九州グリーン購入ネットワーク 福岡県大木町「環境プラザ」運営協議会
3R・気候変動検定