vol.1 3R×低炭素社会に寄せて/減資源・減エネ型社会へ  高月 紘


3R×低炭素社会に寄せて


今年度、3R検定は、「3R・低炭素社会検定」への展開を目指します。これは、社会において活躍する環境関連リーダーの声に応えての挑戦ですが、同時に、3R(循環型社会)と低炭素社会の2分野は、日本が目指す持続可能な社会の重要な柱と考えられるものです。しかし、これらは必ずしも常に同じ方向を向いていると捉えられておらず、時に相反するものとして議論される場面もあります。
そこで、我々は、この2分野が単に「・」で並んでいるのではなく、「×」で対(つい)となり、相乗的に社会を動かすものと理解されるよう、様々な視点から、この2分野の関係を読み解いていきたいと思います。その一つひとつの視点を共有し、再考するプロセスこそが、来るべき私たちの社会への道標になることと思います。




減資源・減エネ型社会へ ~トップメッセージ Vol.1~
高月 紘


1.めざす方向性は一致しているのか?

最近、これからのあるべき社会像として、「持続可能な社会」「循環型社会」「低炭素社会」「自然共生社会」、さらにはそのキーワードとして「3R」「脱石油」「生物多様性」などといろいろな方向性が示されている。これらの方向性はそれぞれ重要であり、進むべき方向性もほぼ正しいのであるが、これらの方向性は必ずしも完全に一致しているわけではない。
例えば、循環型社会にむけて3Rの1つである「リサイクル」を取り上げてみても、リサイクルに固執しすぎると、時にはリサイクルを進めるためにエネルギーを使いすぎて、結果的に環境負荷を増大させて低炭素社会の方向性に相反する場合も生じる。
また、低炭素社会にむけて「脱石油」をめざすべく、代替エネルギーに原子力やバイオエネルギーに過度に依存すると別のリスクが懸念される。すなわち、原子力は当然のことながら核管理・核拡散さらには放射性廃棄物問題で大きなリスクを伴う。バイオエネルギーも再生可能なエネルギーとして注目されているが、食料との競合問題や再生可能容量を超えての使用はバイオ資源の枯渇問題につながり、自然共生社会とは言えなくなる。
このように、それぞれ方向性はそれなりに正しいのであるが、1つの方向性に過度に依存すると、おかしな結果を導きかねない。要は、そのバランスが重要なのである。そして、それ以上に重要なのは、次に述べる方向性の前提条件である。

HighMoon

2.方向性の前提条件

そもそも、今日の人間社会に持続可能性が危ぶまれる事態をまねいた環境問題の原因はこれまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の社会システムにあったことは誰しも認めるところである。言うまでもなく、人間が限られた地球資源と環境容量の中で、あまりにも大量の資源やエネルギーを使いすぎたがために起こした問題である。したがって、めざすべき「循環型社会」、「低炭素社会」ではあるが、従来と同じように大量の資源やエネルギーを使いつつ、それを達成することは基本的に無理がある。エコロジカルフットプリントによれば、現在の日本人と同様な資源・エネルギーの使い方を世界中の人々が行えば、地球が2.5個必要と試算されている。すでに、日本人の生活スタイルは完全に地球環境容量を大幅に超えているのである。このことは、これからの「循環型社会」「低炭素社会」の大前提は、これまでの資源やエネルギー消費量を抑制しなければならないと言うことである。
技術的に代替資源や代替エネルギーで克服できるとの見方もあるが、微調整はできたとしても根本的な解決は困難である。やはり、持続可能な社会の基本は「省資源」であり、「省エネ」なのである。もう少し強く言えば「減資源」「減エネルギー」なのである。


3.3R×低炭素社会にむけて

省エネ・省資源型の生活スタイルを支援しようとエコカー、省エネ家電、省エネ住宅などにエコポイントを付けてエコ商品の普及を図ろうとする施策も導入され、ある種のエコビジネスが注目されている。エネルギー効率の悪い古い製品を省エネタイプの製品に買い換えること自体はそれなりに意味のあることであるが、この際、1人に一台、一部屋ごとに一台と製品の消費が増えることになれば、結果的には環境負荷は増大することになりかねない。やはり、基本は良い製品を長持ちさせることである。
3Rと低炭素社会は方向性が若干異なるところもあるが、大筋では重なるところが多い。
特に、3Rの中で2R(リデュース、リユース)は製品そのものを減らす取り組みであり、製品のLCA(ライフサイクルアセスメント)においても二酸化炭素排出削減の効果が最も大きいものである。製品を造ってしまってから、後始末で二酸化炭素の排出削減策をとってもその効果はあまり期待できない。その意味で、不必要なものはできるだけ消費しないシンプルライフこそが省資源・省エネにつながる3Rと低炭素社会との重要な接点と言えよう。
省資源・省エネ活動といえば、とかく個人レベルの取り組みと考えられがちである。確かに個人レベルでの省資源・省エネ活動は重要であるが、例えば「こまめに電気を消す」「マイバッグを持参する」などの活動だけで、はたしてCOを25%削減できるか?まして将来50%削減などの目標はとても達成できそうもない。
やはり、社会システム自体を減資源・減エネのシステムに転換させなくてはならないのである。特に輸送システム、経済システムを大胆に見直すことが求められる。すなわち、マイカーを規制して公共交通の活用、レンタル、リース、シェアリングなど物の消費に頼らない経済活動、雇用の促進にもつながる農林水産業や福祉事業の活性化など、これまで利便性と効率性のみを重視してきた社会システムを減資源・減エネルギーの視点で再構築する必要がある。くどいようであるが、「3R」も「低炭素社会」も、その基本は「減資源」であり、「減エネルギー」なのである。

3Rx低炭素社会

■プロフィール:高月 紘
【略歴】1941年京都府生まれ。1965年京都大学工学部卒業、1977年京都大学工学博士、1985年京都大学環境保全センター教授。
【現職】石川県立大学教授、京エコロジーセンター館長。
【専門】廃棄物管理、環境教育
【主な著書】「ごみ問題とライフスタイル」「ゴミック廃貴物」。
【主な仕事】廃棄物処理に関する研究、環境教育・環境学習の実践。
【その他】環境マンガの制作、日本漫画家協会会員、ペンネームはハイムーン。



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