『職人さんの作る道具』
山口 茂子 皆様、こんにちは。 それは「ザル」と「カゴ」。ザルもカゴも今どきは、100円ショップでも手軽に入手することができ、物珍しいものではありません。 私は今まで、もっぱら雑貨屋さんで売っている数百円のカゴやお菓子などのラッピングでついているおまけのようなカゴを時々買って愛用していました。職人さんの手作りカゴに出会ったのは、2012年の夏のことです。 ある自然食品店の雑貨フェアで職人さん手作りのキッチン用品の数々が陳列されているなかで写真のカゴを見つけました。上から撮影したものですが、ハンドメイドならではのしっかり感と適度にゆがんだ円形が風情豊かな感じです。これは今、水切りかごとして我が家のキッチンでなくてはならないものとして活躍しています。目が粗く、深さが十分なので、洗い終わったお茶碗やお皿、お椀類がきれいにおさまります。そのまま一晩おくとちょうどよく乾燥しているので、夕ご飯の後片付けを済ませて、朝起きてからすぐに食器類を棚にかたづけます。しいて言えば目が粗いのでごくたまに箸が落ちますが、そこは工夫でしのぎます。プラスチック製やステンレス製のお皿用の仕切りがあり、箸やスプーン用の受けカゴがついている一見便利そうな水切りカゴよりも、私にとっては、はるかに使いやすいカゴです。工夫を凝らしたプラスチック製のカゴを悪く言うつもりはまったくありませんが、今まで使ったどのカゴよりも使いやすいのはなぜでしょうか。実はこのカゴを水切りカゴにしている先輩がいらっしゃるのですが、その方とお話しているときに次のような説を聞くことができました。 「今、広く出回っている水切りカゴはどちらかというと欧米風のデザインになっているんですよ、欧米は比較的乾燥した地域が多く、また食事のときに使うお皿の形や大きさもある程度、限定されていますからね、日本のように湿度が高めでいろいろな形や深さの細々した食器を使う国には少し合わないのかもね…。それにあっちは乾燥している国だから、水浸しのお皿を並べておいてもすぐに乾くみたいよ。」言われてみるとうなづけます。 日本ではメインのおかずのほかに、小鉢に盛ったちょっとしたおかず類を並べていただく習慣があります。それに対して欧米は、大きな1枚のお皿に盛りつけて各自がお料理をいただいているイメージがあります。つまりは日本の風土と暮らしにあっているということなのでしょうか。 こういった品を買う時に気になるのは「お手入れ」です。通常の予算よりたくさん投資するのですから、長持ちするのか、カビないのか。気になります。お店の人は、ときどき短時間の天日干し(長時間直射日光はいけないらしい)をとアドバイスしてくださいましたが、さらに、もしもカゴを編んでいる素材の一部が切れたり、抜けてしまったりしても、壊れた箇所にもよるけれど修理をしますよとも。それって素敵ではないですか! 大事に長く使って壊れたら、作ってくださった職人さんの元にかえって直してもらって戻ってくる。 壊れても直して大事に使おうと理屈では思っていても、実際に壊れると捨てて買い直しがほとんどです。安いものが簡単に手に入る世の中で、わざわざ300円で買ったものを直して使うより買い直したほうがよっぽど簡単。買い物は楽しいです。必ずしも新しい良いものを探すのがダメだとは思いませんが、なかには少したくさんお金を払って手に入れて、大事に、大事に使って、いつかおばあちゃんになってもまだ使っていられたら本当に素敵だなと思います。 ちなみに左下の青いひもは外で干すときように自分でつけました。日差しが気持ちよく乾燥している日に小一時間外につるしておくのに使います。窓の外に目をやると、カゴがゆらゆら風に揺られているのも良い光景です。一度だけ、忙しいのを理由に数日、洗い物を入れっぱなしで放置してしまい、黒いカビの姿が目についたことがありましたが、歯ブラシでごしごし洗って事なきを得ました。これを機に、昔ながらの良い手作り道具を見出して活用してみたいなと思っています。
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