「アズマカナコの捨てない生活」
◎子どもの頃、隣に住んでいた大正生まれの祖母は、若い頃、東京の下町で戦争の空襲にあい家を焼け出され、物がない時代を経験したという。その影響もあって、私が子どもの頃も、祖母は、水や電気、食べ物や着るものなど、なんでも「もったいない」と言い、大切に使っていた。それを見て育った私は、自然とエコやひと昔前の暮らしに興味を持ち、環境問題などが学べる大学に進み、省エネを意識した生活を送ってきた。そして、昨年の震災を機に、これからの生き方を考えたとき、祖母のように生きようと思った。 ◎ ちょうど、子どものおむつがはずれたので、まず洗濯機を使うのを止めてみることにした。もともと、子どもは布おむつで育て、洗濯板で手洗いもしていたので、毎日の手洗いはそんなに苦にはならなかった。洗濯機を使わなくなって、洗濯はほんの少しのお風呂の残り湯と固形石けんだけで済むようになり、洗濯用の粉石けんを買う手間も、洗濯機につくカビを心配することもなくなった。 ◎ さらに、ある日、被災地で冷蔵庫を必要としている人がいることを知り、思い切って我が家の冷蔵庫を寄付することにした。冷蔵庫のない生活ははじめての経験だったが、なければないで何とかなることがわかった。 冷蔵庫をなくしてみて、食材は自分で管理できるだけの量しか持たなくなり、うっかり食材を傷ませてしまうことも、賞味期限を気にすることもなくなった。必然的に買える食材も限られるので、買い物や献立もあれこれ迷うことがなくなった。 ◎食材も長期保存はしないので、新鮮でおいしいうちに食べることができ、調味料の種類も少なくなり、味付けがシンプルで素材の美味しさがよりわかるようになった。物が少ないということは決して不便なことではなく、物に振り回されたり、余計な時間をとられることもなくなり、便利な面もあることに気付いた。物を「持たない」ことで、あるものを大切に使おうという気持ちが生まれたり、あるものを上手に使って暮らせるようにもなってくる気がする。 ◎まずは、なるべく「持たない」生活から「捨てない」生活をはじめてみてはどうだろうか。
東 奏子 アズマカナコ 1979年生まれ。東京農業大学卒 東京郊外の住宅地で築60年の日本家屋に住みながら、車、エアコン、冷蔵庫、携帯電話などを持たずに暮らしている。4人家族で月の電気代は500円程度。著書「布おむつで育ててみよう」(文芸社)、「捨てない贅沢」(けやき出版)、「かんたん手づくりマスク」(小学館)、「台所コスメ」(けやき出版) ブログ http://blog.goo.ne.jp/kana-nozo |