Vol.193『「正しく選ぶ、正しく捨てる、正しく向き合う世界の実現」に向けて』

 

 


『 「正しく選ぶ、正しく捨てる、正しく向き合う世界の実現」に向けて 』

唐金 祐太

株式会社リングスター 取締役営業統括部長


 近年、私が強い問題意識を持って取り組んでいるのが、海洋プラスチックごみ問題です。私は長崎県対馬市の海洋ごみ問題に関するスタディーツアーに参加し、その想像を絶する光景を目の当たりにしました。海岸には信じられないほど大量のごみが漂着しており、強風で分解された発泡スチロールが雪のように舞う現実がありました。年間数億円もの費用と多大な労力をかけても、その全てを回収しきれていない現状を知り、大きな衝撃を受けました。

 この課題に対し、「壊れない工具箱」という耐久消費財を作り続けてきた私たちも、この問題は「関係ない」では済まされないと感じました。そう思い、対馬に漂着したプラスチックごみを耐久消費財として再生し、「そもそもゴミが流れない社会の実現」に向け、事業着手しました。現在、2年の歳月を経て、約1300㎏の海洋ゴミを製品化し、130万円を対馬市に回収費用として寄付を行っています。

 近年、目的化されたSDGsにある種の憤りを感じています。SDGsは大切な指標となる一方で、経済合理性を追求し無理に取り入れると、「経済合理性の合う、響きの良い課題の奪い合い」となり、「経済合理性の合わない、解決しにくい課題」が置き去りにされてしまうからです。正しく向き合わない限り、指標とは正反対の結果を生むことになりかねません。現状、社会的な仕組みそのものを考え直す必要性があると感じています。

 この根深き問題に本気で真正面から向き合う企業は決して多くはありません。消費者に正しい知識を提供せず、企業にとって都合の良い代替素材の提案、「嘘はついていない」がまかり通る広義の定義。そんなことを繰り返して何になるのでしょうか。プラスチック問題は複雑であり、単に「脱プラスチック」を叫ぶだけでは解決できないのです。大切なのは、プラスチックの特性を知った上で、人類がこの素材とどう向き合うべきか、そして、そもそも人としての在り方はどうあるべきなのかを、皆が本気で考えることだと考えます。

 私たちは、生駒市や対馬市と共に、全国の小中高、大学生にプラスチックについて学ぶ教育活動を行っています。未来を担う子供たちが、「正しく選び、正しく捨て、正しく向き合う」ことで、この根深い問題は少しずつ解決されていくと信じています。問題の原因や仕組みを理解し、未来の子供たちが私達を誇れるような行動をとることが、最も大切だと考えます。そして、私たちの取り組みのように、業界や分野を超えて連携し、新たな解決策を生み出すことを目指しましょう。

 未来へ向けた「自分ができる小さな一歩」を積み重ねていくことの大切さを、対馬の現状が教えてくれました。私はこの事業や教育活動を通じ、子供たちがいつだって真剣に向き合い、想像以上の答えを返してくれること、そして自分が本気で子供たちを信じ切れていなかったことを学び、猛省しました。この国の未来は明るいと断言できます。
共に、より良い未来を築いていく覚悟を持ち、歩みを進めていきましょう。

 

   唐金 祐太

【プロフィール】

唐金 祐太(からかね ゆうた)

1988年8月8日生まれ。

2009年に6代目候補として株式会社リングスターに入社。
老舗の技術で実現した耐久力と「収納」の汎用性を活かし、幅広いコラボレーションを展開。
長崎県対馬市に漂着した海洋プラスチックゴミを耐久消費財として製品化・販売し、啓発活動、学生に向けた講義も多数行う。

釣り、キャンプ、登山、日本酒、筋トレが好きな三児の父(全員男)。

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