Vol.103 「たかが計画、されど計画」石井 一英



「たかが計画、されど計画」

石井 一英


 最近、いわゆる自治体が策定する「計画」ものが多くなってきた。
環境関連で言えば、多少の名称の違いはあるものの、総合計画、環境基本計画、廃棄物処理計画、地球温暖化対策計画、生物多様性保全計画、バイオマス活用推進計画、省エネルギー・新エネルギー促進計画、環境教育に関する計画、などなど。


 これだけ計画が多様になると、個別計画と上位計画の階層構造、個別計画間の横のつながりや整合性が気になる。
計画の目的、計画期間(10年、20年)、策定の年度がそれぞれ異なるので、個別計画が充実するようになると、今度は、個別計画を考慮しながら、その上位計画を改定する作業を行うということも珍しくない。
また、上位計画と個別計画の書き分けも議論を要する。

 目標値の設定も難しい。
例えば、リサイクル率○%(○○年度)とある。
かつては、少しずつ取組を進めていけばリサイクル率は少しずつ向上していたので、少々乱暴ではあるが、10年後にはここまであがるだろうと、エイヤーと決めてしまうこともあったと思う。
しかし、ある程度リサイクルが進むと、その内容や課題をよく分析して、目標値を設定しないと、まさに絵に描いた餅となる。
課題-施策-目標改善の定量的な分析がより重要となる。


 一方で、いわゆる安全パイ的な目標設定もあれば野心的な目標もある。
バックキャスティングという言葉もだいぶ浸透してきた。
目標の達成のみが評価の議論になってしまうのは本末転倒である。
野心的な目標は、行政のやる気を示すことになるし、たとえ達成できずとも、その原因や課題が明確になれば、むしろ良いのではないか。


 「計画」ものは、多くの補助事業を行う上で欠かせなくなってきた。
毎年の事業推進に躍起になるあまり、「計画」の長期的視点が軽視され、「補助事業を行うために作ってしまった計画」となってはいないか。
国に追従するあまりに、目標設定の根拠が曖昧になっていないか。
一度、多様になってきた計画の階層構造と横のつながりを整理されたい。


 計画はできてしまった瞬間から少しずつ古くなる。
何もしなければ紙切れ同然である。
しかし、何はともあれ、「たかが計画、されど計画」である。
計画がなければ、何も始まらない。
計画をつくるプロセスを大事にしたい。
一度、自分のまちの計画(複数)を読んで見て下され。

 

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石井 一英

【プロフィール】
石井 一英(いしい かずえい)

北海道大学大学院工学研究院 循環計画システム研究室 准教授
2016年より、北海道の3R・低炭素社会検定講義を担当
専門分野:廃棄物管理(全般)、バイオマス利活用、土壌・地下水汚染
1970年生まれ(札幌)

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