Vol.72 「こどもや孫へ エコのしつけを」 細木 京子



「こどもや孫へ エコのしつけを」

細木 京子

私は「3R・低炭素社会検定」を受けた中では多分いちばんのおバァちゃんでしょう。このテキストの内容は深く、読むだけでも大変勉強になり、今ではテキストをまわりの人にすすめています。

環境問題に関心を持ち始めてから、もう30年も経ちますので、いろいろの場でさまざまな方と会いましたが、大人になってから環境問題を勉強して、さあ実践しましょう、といってももう手遅れだということがよくわかりました。頭でわかっていても行動と結びつかないのです。ですから、環境問題は子どもの時からしつけていかねばいけないと強く思わせられています。

私たちが子どもにあいさつをしつけてきたように、エコのしつけをきっちりとしていかねばいけません。学校の勉強よりもまずエコロジーです。

今、小学生の子どもでも、10年先にはもう立派な社会人になっています。会社員になっていても、行政マンになっていても、どのような場にいても、その時にこそ、環境問題を第一に考えて仕事をする人になっていてほしいのです。

最近、いちばん感慨深いことは、「環境」「エコ」「分別」「省エネ」などということばがすでに日常語となり、子どもたちの口からも自然に出ているということです。今の若者たちが生まれた頃にはすでに、「マイバッグを持ちましょう」と言われ、ごみの分別箱がスーパーの店頭に並んでいたのです。現在私の幼稚園へ通う孫さえも、家の中に整然と並べられた分別箱に、ごみの分別は当然のこととして、燃やすごみ、紙やプラスチック、下の赤ん坊のオムツを分けているのですから、世の動きに感心してしまいます。

しかし、ごみを分別し、リサイクルすればいいというわけではありません。ハイムーン氏の漫画「大リサイクル社会」になっては困るのですから、リサイクルすれば終わり、ではなく、3Rのいちばん難しいリデュース(ごみになるものを持ち込まない)をしっかりできるようにしつけていかねばなりません。
大リサイクル時代

その技と方法こそは、子どもの時からのしつけの中で、また、まわりの大人が毎日、ずっと続けている行動をも見ていることから生まれてくるものではないでしょうか。

専業主婦だった私が環境問題に目覚めたのは、台所にたまっていくレジ袋を見た1985年頃です。「これは何かまちがっている!」と感じて、「世界中からレジ袋をなくさなければ」と大きな夢を見てしまいました。家の近くに京都生協がオープンすることをきっかけに、「レジ袋節約運動」を数人の主婦たちではじめたのです。

しかし、「レジ袋の素材であるプラスチックって何?」「作る時や燃やす時にはどんな悪い物質が出てくるの?」とわからないことだらけでした。情報も全くない時代だったので、私は資料探しに出かけ、そこでハイムーン氏のレジ袋に関する文と漫画に出会ったのです。それらからこの運動は間違っていないと勇気をもらって節約運動を続けたのです。

「マイバッグを持とう」、と来店者によびかけ続け、職員にも協力を頼み続け、とうとう10年後には、京都生協全体としてもレジ袋を5円有料化とするところまでいきました。それでひとまずは「レジ袋節約運動」も休憩となりましたが、最初は遠慮がちに、「マイバッグ忘れたのでレジ袋買います」、と言っていた客も、「5円で買えばいいんだろう」、になってきている気配を感じるので、まだまだやらねばと気がもめます。

レジ袋節約運動に限らず、牛乳パックリサイクル運動、リユースびん運動、など多くの運動がありここまできたのだと思います。廃棄物の研究をしている大学生も、幼稚園児の孫も、そんな経過を知らないでしょうが、このような日本における主婦たちの運動の歴史を耳にする機会があってほしいと思います。

20年ほど前にJ.E.E. 事務所へ、明日帰国するというアメリカの大学の先生が来られこんな話をしていかれたことがあります。「私の祖母はアメリカのある州で、ミルクのびんは回収して何度も使うべきだ、と会社に言い続けていました。そんな邪魔くさくお金のかかることはできない、と言って反対されていたけれど、要望し続け、ついに州の法律ができて、びんを再使用するようになったのです。みなさんも活動をがんばって続けてください」と。この話を聞きずいぶん元気づけられたものです。

現在は世界のあちこちでテロなどが起こり、ほんとうに恐ろしく、危険を感じます。しかし、私たちの草の根運動を通して、お互いに顔の見える関係であれば、すこしは理解しあっていけるのではないかと思うのです。
環境問題のプロにならなくても、普通の生活の中で環境への意識を高めて、実践する市民がいっぱいに増えていくことが私の夢です。

そのために、まずは子どもたちが3Rを実践していけるように、ものを買うことで豊かになるのではなく、すでにあるものの中で豊かさ・幸せを感じられる価値観をもつライフスタイルをつくりたいです。

毎日の生活の中で、楽しく、そして、何だろう?と子どもたちと一緒に小さな実験をしたりしながら過ごしたいと思っています。

今日も「エコネコおバァちゃん」の私はリュックの中に、人形や小道具、啓発用のいろんなグッズを入れて、子どもたちの待っているところへてくてくと。



細木 京子


【プロフィール】
細木 京子 (ほそき きょうこ)

環境カウンセラー、消費生活専門相談員、日本環境保護国際交流会(J.E.E.)事務局責任者

1946年 京都府生まれ
平安女学院短期大学 保育科卒業

1985年~ 子育て中に台所にあふれるレジ袋を見て世の中おかしいと感じる。
「レジ袋節約運動」を京都生協の一店舗で、数人の主婦たちと始める。

1988年~ ハイムーン氏のレジ袋の記事が目にとまり、それを大切な教科書として 運動を続ける。
その後市民グループJ.E.E.と出会い、その中で高月紘先生のリサイクル勉強会に参加。J.E.E.メンバーは移動が多いため、少しずつ事務局の仕事を手助けし現在に至る。

1990年~1996年
生活全体を把握しないとごみ問題の理解もできないと考え、京都市消費生活センターで、消費生活専門相談員として仕事をする。

2000年~ 子どもたちへの啓発こそ大切だと感じて、環境人形劇・紙芝居「エコネコ座」をJ.E.E.でスタートさせる。テーマは「すいとうと買い物袋をもとう」「紙を大事に」「冷蔵庫のドアをすぐしめよう」など。 子どもたちをたずねてあちこちへ、最近では海外へも出かけることもある。 J.E.E.のHP : www.jeeeco.org


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