Vol.35 商店街3Rマップをつくってみた-果たして商店街は持続可能か- 岡山 朋子



商店街3Rマップをつくってみた-果たして商店街は持続可能か-岡山朋子

 まちづくり3法のひとつ、大規模小売店舗立地法が施行されて久しい1) 。名古屋市内でもいまだに大規模な小売店鋪がどんどん増えている。また、去年あたりから既存の大型スーパーと新規出店する大型スーパーは、軒並み朝7時開店となりつつある。どうやら高齢者をターゲット2)にしているらしい。しかし、名古屋市だけではなく日本全体の人口は減っていて、消費量は増えていない。ということは、単純に考えれば売り場面積が増えた分だけ、どこかの店舗が無くなっているということではないのか。

 2013年5月28日付けの新聞には、産業構造審議会で「商店街の再活性化」を目指す特区制度の創設や、まちづくり3法の改正を盛り込んだ提言案が了承されたとあった。が、前々から疑問に思っていたが、この大型スーパーと商店街。両立するものなのだろうか。特に商店街について考えてみたい。

 現在の私の勤務先である大正大学は、東京は西巣鴨に位置している。日本一有名な商店街と言っても過言ではないおばあちゃんの銀座・地蔵通り商店街にほど近い。旧中山道に形成された地蔵通り商店街は、そのまま庚申塚商店街につながり大正大学の横を通る。さらに明治通りとの交差点を越えたその先は、滝野川銀座となる。このように、大正大学から半径約1.5キロ圏内に、およそ20もの商店街が存在する。これらの商店街について、大学1年生が「商店街のなかの3Rに貢献するお店」を調査して「環境にやさしいお店・商店街3Rショップマップ」を作成した。

 3Rといいつつも、主に2R系のお店(具体的にはリサイクルショップ、古本屋、古着屋、修理をしてくれるお店など)を6班に分かれて一斉調査。お店には授業の一環でマップをつくることを説明し、そのために簡単なインタビューおよび写真などの掲載許可を取ることを指示した。また、お店調査だけではなく、その街の名前の由来や観光スポットなどの特徴、そしてその街の印象も注意して見てくるようにと送り出した。商店街を中心としたまちづくり調査であるとも言える。

 私が事前にこれらの商店街に足を運んだ際には、だいたいどこにも数軒の2Rに関係するお店が確認できていたので、少なくとも空振りになることはないだろうと思っていた。HPに工夫を凝らしている商店街、地元ならではのイベントを開催している商店街もあった。プチ観光スポットにも事欠かない。きっと各班それぞれ特色のある商店街マップをつくってくれるだろうと期待していた。が、これが思いのほか大苦戦となったのだ。

 ある班は、通り続きの商店街・SI銀座に王子方面から入り、まずお店が開いてないことに驚いた。その後、最初に訪ねた(修理と書いてあったらしい)靴屋さんに「取材は受けないことにしている」と断られた。続いて他の店でも(お客さんはいないのに)「忙しい」と断られ、そのままもう一つのSF銀座まで行ったが結局お店情報の収穫はゼロ。せっかくのイベントもスルーして帰ってきた。この旧鎌倉街道にある駒込側の商店街は別の班が担当した。そちらは逆に駒込駅側から歩いていったが、そこは普通の住宅地であまりにもお店がなく、上記SF銀座に入ってやっと「商店街ぽくなった」と思ったと言う。それでもなんとか数軒のお店にインタビューできて写真も撮り、A通り商店街を中心にマップを作成した(写真1)。

商店街3Rマップ1
(写真1)

 大学隣接のK商店街含む4商店街を調査した班は、やはり最初の1軒に断られ隣のお店も入る前から迷惑そうにされたと、意気消沈していったん大学に戻ってきた。ならば量り売りをしているお店を探してみようともう一度まちに出て行ったが、結局量り売りのお煎餅屋さんでお煎餅を買っただけで帰ってきた(写真2)。

商店街3Rマップ2
(写真2)

 GZ通商店街はもともと2R系のお店が少ないので、担当班には巣鴨駅反対側の商店街にも足を運んでもらった。が、チェーン店のリペアショップ数軒にいずれも店長不在を理由にインタビューを断られた。ただ、GZ通り商店街の家具屋さんには「梱包材が多くて処理に困る。どうしたらいい?」と相談されたらしい。今度、学生と一緒に訪ねてみようと思う。

 大塚駅周辺は、大塚駅の南北で商店街の様子が大きく異なる。北側は、人通りは多く飲食店が多い。南側は商店街らしい街並みだが人通りは少ない。ここもブック○フなどのチェーン店には担当者不在とインタビューを断られたが、自転車屋さんには親切に修理についてお話を伺えた。豊島区の放置自転車対策とも連動しているらしく、研究の芽を発見!

 大学と板橋駅の間にある5つの商店街は、もともと市場があった場所でもあり、新撰組の近藤勇の処刑場跡があってそれを売りにしている。また、フランス学園と一緒に可愛い商店街マップをすでに作成している。しかしながら、この班もかなり頑張ったが情報が得られたお店は3軒だった。そして、せっかくの新撰組にかけたスーパー等の「新鮮組」ののぼりも、あまり目に入らなかったようである。

 というわけで、対応してくれたお店は全部で11軒に留まり、「商店街は環境にも学生にもあまり優しくない」というのが今回の学生による調査の結論となってしまった。そして何よりも残念だったのは、総じてあまり楽しくない調査になってしまったおかげで、学生達の大半が「もう二度とこの商店街には行かない」と言っていることである。

 学生も消費者だ。今回も、調査依頼は丁寧に、買い食いや買い物は大いにしてきなさいと言って送り出している。しかし、20も商店街があって、快く対応してくれたお店は約10軒。実はもう商売として成立しなくてもいいというお店が少なからずあったからではないか。商店会に加盟していないお店も実は多いというが、消費者にとってはだから何?だ。チェーン店も、いくら店長不在でも、授業のなかでお店の名前と外観の写真を発表することすら許可できないものなのだろうか。グリコンガイド3) は、そもそも無料で広報してくれる媒体なのに。

 また、シャッターを閉じたままにして人に貸さない遊休不動産が連なると、いかにも「シャッター街」の様相を呈する。あるいは○○商店会と街路灯に書いてあっても「お店はどこ?」という通りも多い。要するに、すでに商店街が消失しているということだ。

 これらのお店・商店街は、その商店街の活性化を真剣に考えているようには感じられず、自分の街を盛り上げようとしているように思えない。そして学生の目には「活気がない、楽しくない街」「若者の参加感がなく高齢者だけの街」すなわち「魅力のない街」に映ってしまうのだ。これではやはり学生は決して足を運ばないだろう。

 商店街をフィールドに「まちづくり」をしている人たちを揶揄するつもりは全くないが、しかしその取組は独りよがりになっていないだろうか。地域商業の賑わい創出の核である商店街の衰退は、郊外の大型スーパーのせいだけではなく、実はその街自身にも原因があるのではないだろうか。何よりも、これまでも相当な額の商店街活性化のための補助金が投入されてきたにも関わらず、結果的にますます衰退している結果を鑑みれば。経産省は、さらなる闇雲な補助金投入や画一的な商店街保護政策を再考するべきだと思う。

 …と、だいぶネガティブなことばかり言ってしまったが。3Rリーダーには、ぜひとも地域のエコマップやグリコンガイドを一度作ってみてほしい。それをきっかけに「まちづくり」に参加してもらいたい。できれば若者を巻き込んで。もしも3R・低炭素の視点から商店街を少しでも活性化できたら、それは素晴らしい全国的なモデルとなるはずだ。


【注釈】

1) 中心市街地活性化法、都市計画法、大規模小売店鋪立地法からなり、1998年に成立、2006年に一部改正された。
2) 個人的には小学生の通学時間帯に高齢者の車がスクールゾーンに入り込むのを制限するべきだと思う。
3) グリーンコンシューマーガイドブック。グリーンコンシューマー10原則に基づいて「環境に優しいお店」を選び、そのお店情報をまとめたガイドブックのこと。




岡山朋子







【プロフィール】

岡山 朋子(おかやま ともこ)
現職:大正大学 人間学部人間環境学科准教授/おかえりやさいプロジェクトリーダー

略歴:
1994年 名古屋大学法学部法律学科卒業
1997年 名古屋大学大学院国際開発研究科修了
1997年 (NPO)中部リサイクル運動市民の会スタッフ
2004年 名古屋大学大学院環境学研究科満期退学
2005年 名古屋大学エコトピア科学研究所特任講師
2008年 博士(環境学)、おかえりやさいプロジェクト発足 http://okaeri.n-kd.jp/
2012年 豊橋技術科学大学特任研究員
2013年 大正大学人間学部人間環境学科准教授

ページの先頭へかえる