~<高レベル放射性廃棄物の3R>~岡山 朋子 ◎2011年10月中旬、私は国際廃棄物学会(International Solid Waste Association)という国際会議に出席するため、韓国のテグを訪れた。 ◎学会3日目の朝、とあるオーストラリアの研究者が、会議場に向かうシャトルバスの中でこう言った。 「EPR※を知っているよね? これにのっとって考えるならば、ウランを生産して日本に輸出したオーストラリアは日本の原子力発電所の核のごみ処理にも責任を持つべきだと思う。オーストラリアは人口も少ないし、人の住んでいない環境の悪い空いた土地も多い。核のごみを埋める場所なんてたくさんあると思う。ま、僕の個人的な意見で他のオーストラリア人は反対だろうけれども。」 ◎なるほど。 ◎でも、隠れた物質フロー(エコリュックサック等)が問われるようになって10年以上が経過したが、そもそも日本は地下資源を世界中から掘削して輸入し、そのときの掘削土や諸々のごみをそのまま現地に押し付けてきている。その上、その資源を使ったあとのごみまでを現地に戻すという発想は許されるのだろうか。 ◎とはいえ、掘ったところに戻すという発想は理にかなっているようにも思う。 少なくとも、例えば日本の原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物をモンゴルに最終処分するなどという発想よりは理解しやすい。 ◎一方、昔亜炭を採掘し、その後微量のウランが採掘された東濃地域(岐阜県土岐市、瑞浪市等)では、かつての亜炭坑跡に放射性廃棄物を埋め戻されるのではないかと市民団体等が警戒を強めている。途上国に危険な廃棄物を押し付けるのは人道的に間違っていると思う。とはいえ日本国内に埋めるのも嫌というのが本音である。 ◎ついでに付け加えるならば、最終処分量を最少化するために、ごみをリサイクルして処分量を減量することは至極当然の発想である。少なくとも日本の廃棄物処理業界では常識だ。だから日本ではこれまで「使用済み核燃料のリサイクル(核燃サイクル)」構想を進めてきた。多分、莫大な額の研究費も投入されてきたはずだ。かの有名な武田邦彦先生も、かつてこの研究費を使った研究者の一人である。しかしながら、高速増殖炉もんじゅの事故等、核燃サイクル構想にも暗雲がたちこめていることは周知の事実だ。 ◎どんなごみでもリサイクルできるという訳ではなく、その処理技術とコストとのバランスを考えて、そのごみをリサイクルするかしないかを十分に検討してからリサイクルするべきである。少なくとも、各リサイクル法ではそのような検討に基づいて「何をリサイクルするか」決めている。例えば自動車リサイクル法でも建設リサイクル法でも、廃棄された自動車や解体された建設物のすべてをリサイクルしろと規定しているわけではない。食品リサイクル法でも、排出事業者に食品廃棄物の100%のリサイクルを義務づけているわけではない。 ◎そして思うに、専門家ではないので明言は避けるが、使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)は技術的にも経済的にも「リサイクルできないごみ」なのではないだろうか。つまり、粛々と適正処分するしかないごみなのだ。残念ながら。 ◎閑話休題。 ◎自分の出したごみ処理は自分の域内で行うのが世界のルールである。 それに基づくならば、日本は放射性廃棄物を日本国内に埋めるべきであろう。そのつもりでNUMO(原子力発電環境整備機構)もこれまで一生懸命地層処分する場所を探してきたが、約1700ある自治体はどこも手を挙げてくれなかった(正確には2007年、高知県の東洋町が初めて文献調査に応募したが住民は大反対、町長は辞職した後、次の町長選で落選した)。 ◎処分場候補地が見つからず八方塞がりになっていたところに、今回の東日本大震災と福島第一原発事故が起こった。これまですでに六ヶ所村に一時保管・集積されている分に加えて、原発解体ごみの処理・処分も早急に検討せざるをえなくなった。高レベル放射性廃棄物処理問題は、さらに困難な状況に陥っている。 ◎現在一時保管されている放射性廃棄物も一緒に「福島の石棺」に収めるのか?それとも石棺とは別に六ヶ所村に永久に一時保管(矛盾あり)するのか? これから続々と発生すると予測される廃炉の解体ごみはどうするのか? 全国に次々と石棺ができていくのか? ◎とりあえずは3Rの基本に立ち返り、まずは放射性廃棄物の発生抑制努力をするべきだ。それは結局、原発の運転を止めるということに他ならないという結論になってしまうのだが。 ◎「合格者の皆さんも、どうか放射性廃棄物の3Rについてお考えください。」 ※EPR (Expanded Producer Responsibility):メーカーなどの生産者が製造・販売した商品が廃棄物になった際に、その生産者が引き取りや処理、リサイクルなどの責任を負うという考え方。拡大生産者責任と訳される。OECD(経済協力開発機構)が提唱し2001年には加盟国政府にガイダンス・マニュアルを公表した。循環型社会形成推進基本法にもこの考え方が取り入れられている。 |